ゲームの勝者は金正恩か? ICBMで一変した北東アジア情勢
ニューズウィーク日本版 / 2017年8月24日 11時30分
ロシアはこれまで北の核開発を助け、石油輸出も増していることに頰かむり。国連で制裁が議題になるたび、自分の協力を北やアメリカに高く売りつける。日本はといえば、ICBMが上空を通過するはずの地域に高空には届かないパトリオットミサイルを慌てて移動したり、集団的自衛権を発動してICBMを撃墜するのは憲法違反かどうか「神学論争」を繰り広げたりしている。
こうした無責任なポーカーゲームを尻目に、歴史の舞台は回り始めた。国内世論に北の核問題解決を迫られる一方で武力行使の手は縛られたアメリカにできることは、北朝鮮との話し合いしかない。しかし平和条約締結で朝鮮戦争を終わらせれば、米軍は韓国に居残る大義名分を失い出ていくこととなる。
そうなると北朝鮮主導の南北再統一への力学が働いて、ロシア以上のGDPを持つ統一朝鮮、それも核兵器を持ち、日本に敵意を持つ大国が誕生するのだ。
【参考記事】米駆逐艦衝突、艦隊一時停止で太平洋での防衛が手薄に
核ミサイルが飛んでくるかもしれないのにゴルフ休暇を楽しむトランプ米大統領、核ミサイルと米中日のはざまで立ち位置を定めかねている韓国の文在(ムン・ジェイン)寅政権、加計学園問題で支持率が低下した安倍政権――立ちすくむ役者たちをのせた舞台は回転を速めると後方に消えていく。
次なる幕は、北東アジア諸国の見栄と意地の力比べ、歴史上の恨みの清算の場。中国経済が大崩れしなければ、アジアは中華圏復活の様相を強め、アメリカも中国のルールに従わざるを得なくなる。日米はアジアがもたらす脅威と利益を見つめ直し、その上で同盟関係を再定義する作業を始めるべきだろう。日米双方とも一国だけでは、アジアでの脅威に対処し、利益を確保するのは難しい。
<本誌8月22日発売最新号掲載>
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河東哲夫(本誌コラムニスト)
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