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9.11から16年、アメリカの分断 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2017年9月12日 13時0分

またアフガニスタンに関しても、タリバンとの闘いを進めつつも、タリバンの中に交渉相手を模索するということは、ずっと続いてきました。またアルカイダに関しては、とにかくオサマ・ビンラディンを捕縛して処断するという努力を続け、ブッシュとオバマの二代の大統領が追い詰めた結果、パキスタンで拘束、殺害するという結果になっています。



一部には、そのオバマは、イラクにおける権力の空白を作り、またシリアへの介入を渋った結果、ISISの伸長を招いたという批判もあります。ですが、仮にブッシュの路線が100%継続したとしても、イラクの完全支配が可能になったり、シリアにおいて革命が100%成功したりした訳でもないと思われます。ですから、大きな枠組みとしては、オバマはブッシュ路線を継承したという言い方をして良いと思います。

では、アメリカの分断とは何かという問題ですが、これは「9.11のダメージから復活して、あらためてグローバリズムを信じて高度な先端技術や金融工学で繁栄している部分」と「9.11を契機に世界への恐れを抱き、世界から取り残された部分」という形で出てきているのだと思います。

【参考記事】ドイツが見いだしたヘイトとの戦い方

そして、その「取り残された部分」を政治的なエネルギーとして取り込んで成立したのがトランプ政権でした。ですから、そのトランプ政権は、議会では野党の民主党だけでなく、与党であるはずの共和党とも時には激しく敵対しているのです。

この前のハリケーン「ハービー」被災に対する復興予算を通すにあたって、トランプのホワイトハウスは、共和党の大統領でありながら、議会民主党と先に談合をして議会共和党を突き上げるという「離れ業」と言いますか「究極の節操のなさ」を見せたわけですが、それもトランプの政治エネルギーの源泉にあるのが、この「取り残された部分」だということを示しています。その部分から見れば、ブッシュ的なものも、オバマ的なものも味方ではないからです。

そう考えてみると、トランプの醸し出している「9.11」への冷淡さというのも理解できるように思います。ニューヨークの地元の人間でありながら、特別なメッセージを出すわけでもないし、時間を気にしないスピーチをしてみたりというのも、納得が行きます。以前にトランプは、「9.11を引き起こしたのはブッシュ大統領だ」といった陰謀論めいたことを主張していた時期もありました。いずれにしても、「9.11が遠ざかった」今、あらためてこのアメリカの分裂が重要な課題として浮かび上がってくるように思います。


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