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滑走路の熱を隠す軍用コーティング剤を転用したLAのヒートアイランド対策

ニューズウィーク日本版 / 2017年9月15日 16時20分

<都市の"ヒートアイランド"の現象が問題になる中、アスファルト舗装の道路に軍用技術を転用した特殊な塗料をコーティングするプロジェクトがロサンゼルスで進められている。暑熱対策が問題の東京オリンピックでどうだろう?>

米国の航空宇宙局(NASA)と海洋大気庁(NOAA)の分析によると、2016年の世界の平均地表温度は、1880年の観測開始以来、最も高い値を記録。3年連続でその最高記録を更新した。

とりわけ、都市部での温度上昇は、深刻な課題のひとつだ。コンクリートのビルやアスファルトで舗装された道路では、日中、太陽熱を多く蓄積し、夜間、この熱を大気に放出するため、気温が下がりづらく、都市部の気温が郊外に比べて高温になる、いわゆる"ヒートアイランド"の現象が起きる。

"ヒートアイランド"は、エアコンなどに使用するエネルギーのピーク需要を増大させ、大気汚染をもたらし、温室効果ガスの排出量を増やすのみならず、都市部の生活環境にも影響を及ぼし、熱中症をはじめ、人々の健康をも脅かす。

軍用滑走路の熱を隠すコーティング剤

市域の約10%がアスファルトで覆われている米ロサンゼルス市では、持続可能性を重視する都市計画『pLAn』において、「2035年までに、都市部と郊外との温度差を華氏3度(摂氏1〜2度)縮小させる」との目標を掲げ、その施策のひとつとして、アスファルト舗装の道路に特殊な塗料をコーティングする『クール・ペイヴメント・パイロット・プロジェクト』をすすめてきた。

『クール・シール』と呼ばれるこの塗料は、軍用機が偵察衛星から見つかりづらくなるよう滑走路の熱を隠すコーティング剤としてカリフォルニア州のガードトップ社が開発したもの。

明るい色と反射率の高さによって表面温度を下げる効果があり、現在では、"ヒートアイランド"への対策として、駐車場や道路にも転用されている。たとえば、ロサンゼルス市のジョーダン通りでは、華氏100度(約37.8度)の気温下において、一般的なアスファルト舗装の道路で地表温度が華氏153度(約67.2度)まで上昇した一方、『クール・シール』でコーディングした道路はその温度が華氏138度(約58.9度)にとどまったそうだ。


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ニューヨーク市でも、別の白い塗料で

米国の環境保護庁(EPA)によると、ロサンゼルス市の道路全体の35%を『クール・シール』のような反射率の高い塗料などでコーティングすれば、気温を華氏1度(摂氏0.6度)下げることができると分析している。

アメリカでは、ニューヨーク市でも、建物の屋根を反射率の高い白い塗料でコーティングするプログラム『NYCクール・ルーフス』が2009年に創設され、2010年の1年間で、626棟の建物の屋根を対象に、合わせて100万平方フィートのスペースがコーディングされている。

これらの先行事例は、日本の都市部での"ヒートアイランド"対策においても、参考になりそうだし、真夏の競技の暑熱対策が問題の東京オリンピック時にどうだろう。


松岡由希子

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