小池都知事の「希望の党」、原発ゼロ政策への疑問 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2017年9月28日 13時40分
<原発ゼロと排出ガス抑制を両立させるのは難しい。原発ゼロを公約にするならより大きなエネルギー政策の青写真が求められる>
小池百合子東京都知事が「希望の党」を立ち上げました。このコラムでお話ししたように、「消費税率引き上げには慎重」「9条3項改憲にも慎重」というのは、予想通りでしたが、やや意外だったのは「原発ゼロ」を明確に打ち出した点です。
もちろん、小池氏の政治的盟友である小泉純一郎氏との協議を経て決めたという経緯などから、政治的な流れは理解できるのですが、政権の行方に影響を与える総選挙において「原発ゼロ」政策を、そう簡単に出して良いものなのでしょうか。そこにはやはり懸念を感じます。
1つは「保守の立場での原発ゼロ」という問題です。ここまでの流れを見るのであれば、小泉氏の場合、政権から離れてから「使用済み核燃料を何万年も保管しなくてはいけない」ことを知って衝撃を受け、「今すぐ、原発ゼロを進めるべき」と確信したとか、この点で細川護煕氏とも意気投合したという経緯があるようです。
小池氏もこの流れに乗っているのであれば、「保守政治家が環境問題では左派に同調している」ように見えますし、もしかしたらご本人たちもそう思っているのかもしれません。考えてみれば、日本の保守主義の中には自然観や季節感など地域の風土に根ざした環境観との親和性があるのは間違いないわけで、保守主義と環境保護というのは、別に矛盾しないという考え方もできます。
ですが、国際社会からは少し違って見えるのも事実です。まず、日本の「リベラルの原発ゼロ」は、国際社会においては政策それ自体が批判されるとか、日本が孤立に追い込まれる危険はないわけです。何故ならば、日本のリベラルは、「核の利用」のすべてを嫌っているわけです。言い換えれば、核兵器など冗談ではないというのがまず前提にあって、その延長上で平和利用にも感情的な拒絶感を持っているわけです。まず「反核」があって、それを具体化したものとして「反核兵器」と「反原発」があるからです。
ですから、プルトニウムの問題に関しては、蓄積されたプルトニウムを「プルサーマル」などで燃やすのにも反対なだけでなく、持つのも再処理で作るのも反対、つまりは、全量廃棄ということで極めて明快な立場を取っています。ですから、別に核不拡散の立場から心配するような「突っ込まれるスキ」はないわけです。
ですが、これが「保守の反原発」ということになると、話が違ってきます。特に小池氏の場合は、昔から「日本の核武装の可能性について、議論は排除しない」という立場を明確にしてきた経緯があります。ですから「反核」ではないわけです。
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