【写真特集】巨匠が捉えた1950年のピッツバーグ
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月4日 17時15分
<67年前のピッツバーグ、環境汚染のひどい鉄鋼の街はクリーンに変わりつつあった>
街角の犬や子供、恋人たちをユーモアと人間味あふれる視線で捉える世界的写真家エリオット・アーウィット。写真家集団マグナム・フォトに所属する前、若きアーウィットが米ペンシルベニア州ピッツバーグを写した貴重なネガが近年発見され、写真集として発表された。
22歳の彼がピッツバーグに降り立ったのは1950年。かつて恐慌勃発後の農村を写真に記録する国家プロジェクトを指揮したロイ・ストライカーの誘いを受け、環境汚染のひどい鉄鋼の街がクリーンに変わりつつある姿を記録するためだった。
9~12月にかけ、アーウィットは街並みや人々を精力的に撮影した。「人間的興味」を根底にした写真には、後の作品に通じるウイットが感じられる。だが12月に陸軍に徴兵され、プロジェクトを断念。大量のネガが、60年以上眠り続けた。
今年6月、そのピッツバーグを「代表」すると公言したのがドナルド・トランプ大統領だ。温暖化対策のパリ協定からの離脱は、鉄鋼業の衰退したこの街のためだと発言した。だが、ピッツバーグ市はこれを一蹴。今や同市はクリーンエネルギーで成長する街に生まれ変わりつつある。アーウィットが記録した67年前と同じように。
第1次大戦の休戦記念日(11月11日)のパレードに集まった群衆
人々の一瞬を切り取ったアーウィットの作品にはウイットが垣間見える
取り壊し工事現場での作業員
ある日曜日の午後、アーウィットはプレズビテリアン教会から正装姿で出てくる女性たちにレンズを向けた。静かな時間を邪魔され不満を隠さない婦人たちの表情がユーモアを誘う
バウンダリー通りにたたずむ子供たち
ダウンタウンの帽子店
生まれ変わるピッツバーグの街に暮らす人々をアーウィットは生き生きと描き出した
自然体でエネルギッシュな子供たちをアーウィットは好んで被写体に選んだが玩具の銃を手に笑う黒人少年のように人種的背景がうかがえる作品もある
ずらりと列をつくって路面電車を待つ人々
11月の休戦記念日のパレードが行われる街中で
街角にたたずむ女性
撮影:エリオット・アーウィット
1928年、ロシア人の両親の元にパリで生まれ、11歳でアメリカに移住。53年、ロバート・キャパの推薦を受けて、写真家集団マグナム・フォトに参画。ジャーナリスティックな作品から広告写真、ドキュメンタリー映画やテレビ番組など多様なプロジェクトを手掛け、半世紀以上にわたり世界中のメディアに発信し続けている
Photographs from "Pittsburgh 1950" (GOST Books) by Elliott Erwitt. All images © Elliott Erwitt / Magnum Photos/Courtesy of Carnegie Library of Pittsburgh
[2017年9月26日号掲載]
Photographs by ELLIOTT ERWITT
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