中国が北朝鮮を攻撃する可能性が再び----米中の「北攻撃」すみ分けか
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月2日 16時30分
かといって、いざとなったら武力攻撃がないわけではない。
それを見据えて、中国は早くから考えていた「中国による北朝鮮に対する武力攻撃」を「米中とのすみ分けの中で」模索している。
2016年2月22日付けコラム「いざとなれば、中朝戦争も――創設したロケット軍に立ちはだかるTHAAD」に書いたように、中国が北朝鮮を軍事攻撃するという可能性は早くからあった。
しかしトランプ政権誕生後、事態が一変し、中国は「双暫停」と「対話」を唱えながらも、むしろトランプの方針を「やや協力的に」見守るという姿勢を貫いている。
それは米中関係の親密度を踏み台にして、世界のトップに上り詰めようという野心が習近平にはあるからだ。だから、中国はアメリカとは絶対に敵対しない。
では、この大前提の下で、いま中国が取れる方法は何か。
それは、アメリカによる北への武力攻撃が始まろうとする寸前に、中国が北朝鮮への武力攻撃をする、というシナリオだ。
これまでと違うのは、「アメリカと敵対せずに遂行する」ということである。
つまり、アメリカと協力しながら、軍事力をすみ分けて「中国独自の軍事攻撃」を北朝鮮に対してするというやり方である。
中国はこれまで何度も、米韓が38度線を越えたら中国はそれを阻止すると言ってきた。したがって、ある意味、アメリカが、アメリカの代わりに中国に軍事攻撃をしてもらうということになる。互いに了承済みで、勢力図をすみ分けながら断行する。但し、党大会が終わるまでは中国は絶対に動かない。場合によっては来年3月の全人代閉幕直後辺りまで延ばす可能性もある。
米中の相互補助
このシナリオはちょうど、ティラーソンが発表した「アメリカによる北朝鮮政府との複数の対話手段の保持」と、対(つい)を成している。
ティラーソンはなぜ、わざわざ「北京で」記者団に対して話す必要があったのかを考えれば理解できるはずだ。中国は対話による解決を要求している。だから、それに応える意味で、ティラーソンは、敢えて発表の場として北京を選んだ。しかも習近平との対談の直後に。
習近平は金正恩(委員長)の度重なる無礼と屈辱的手法に堪忍袋の緒が切れかかっている。だから、「武力攻撃もあり得る」ことをちらつかせるトランプに、「いざとなったら」協力的に武力を断行し、北を敗退させた時の中国の「持ち分」を確保する訳だ。
日米韓が主戦場にならないという意味では、最高に良い選択とも言える。
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