米朝戦争の落とし穴----誘導兵器不足で必要以上の死者が出る
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月4日 19時40分
アメリカが北朝鮮と戦争する瀬戸際まで来たのは、今回が初めてではない。米軍は1994年、ビル・クリントン元米大統領の命令で、北朝鮮に巡航ミサイルとステルス爆撃機を派遣して寧辺の核施設を空爆する計画を進めていた。核爆弾の燃料となるウラン濃縮活動をやめさせるためだ。結局、攻撃すれば全面戦争になると判断したクリントンが最終的に軍事攻撃を断念。その代わり、国連安保理による制裁強化で北朝鮮への圧力を高めることに力点を置いた。
だがトランプ大統領の下では、米朝戦争の危機が一層差し迫って見える。ジェームズ・マティス米国防長官は9月、北朝鮮に対して核・ミサイル開発をやめるよう通告した。マティスはさらに、北朝鮮がアメリカや同盟国を攻撃すれば、アメリカは北朝鮮を全滅させると警告。「北朝鮮の全滅を望んでいるわけではないが、我々には多くの軍事的選択肢がある」と言った。
マティスは恐らくこの発言で、米軍が核兵器で反撃する可能性を示唆したのだろう。だが国防総省は、核攻撃という破滅的なシナリオに至らずにすむ軍事的選択肢も持っている。国防総省は、北朝鮮が通常兵器でアメリカの同盟国を攻撃した場合、韓国や日本、米海軍の艦船に配備するミサイル防衛能力を総動員して迎撃する構えだ。ただし専門家は、北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃するのは技術的に困難ではないかと疑っている。
サイバー攻撃も模索
米情報機関も北朝鮮の核開発を止めるため、核施設にサイバー攻撃を仕掛ける方法を模索中だ。実際にアメリカは、イスラエルと共同開発したコンピューターウィルス「スタックスネット」を使って、2010年にイランの核施設を一時使用不能に追い込んだと信じられている。
もし米情報機関の分析で、北朝鮮が大気中で核実験を行う兆候が分かれば、米軍が北朝鮮のミサイル発射台を標的に空爆を行うことも選択肢になる。そうした空爆では、レーザー誘導、レーダー誘導、熱誘導、GPS誘導など、命中精度が高く米軍が好んで使う精密誘導爆弾やミサイルを使用することになるだろう。
だが国防総省は、そうした誘導兵器の不足に苦労している。イラクやシリアにおけるISIS(自称イスラム国)の掃討作戦で使用頻度が上がったことが原因の1つだ。米政府関係者は、誘導爆弾の不足が、北朝鮮と空中戦を戦う米軍の能力にどれほど影響を与えるかについて、表立ったコメントはしない。だが匿名の関係筋は、もし米朝戦争が起きれば、不足はすぐに明るみになると言う。「あらゆる精密誘導兵器の備蓄があっという間になくなり、粗悪な無誘導爆弾の使用に逆戻りするだろう」と、米議会のある軍事専門家は言う。
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