メルケルの「苦い勝利」はEUの敗北
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月7日 11時0分
<先月の議会選挙でメルケルの4期目続投は確実になったが、反EUの極右政党の躍進に押されて独仏協調のEU改革は困難に>
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は4期目の続投を確実にしたが、その表情は冴えない。
9月24日に実施された連邦議会選挙(下院選)でメルケル率いる与党・キリスト教民主・社会同盟(CDU・CDS)は第1党の座を維持したものの、得票率は33%で過去最低レベル。呉越同舟のゴタゴタを覚悟で新連立を組むか、前例のない少数与党政権を発足させるしかない。
しかも今回の選挙では極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が国政進出を果たし、議会の第3党に躍り出た。
一方で中道左派の社会民主党(SPD)は惨敗を喫し、連立から離脱。メルケルは企業寄りの第4党・自由民主党(FDP)、第6党でFDPとは反りが合わない緑の党と大連立を組む可能性が高い。
今回の結果と対照的なのは、今年4〜5月に行われたフランスの大統領選挙と6月に行われた国民議会選挙(下院選)だ。エマニュエル・マクロンは大統領選の決選投票でほぼ3分の2の票を獲得。下院選では彼が率いる「前進する共和国(REM)」が、共闘を組む政党と合わせて国民議会の6割強の議席を獲得した。
マクロンの圧勝を受けて、メディアは一斉に「欧州の民主主義を脅かすポピュリズム旋風に歯止めがかかった」と歓喜の声を上げた。欧州統合を引っ張ってきたドイツとフランスが再び「1つの欧州」の旗振り役となり、延び延びになっていた改革を主導して、EUの経済的・政治的基盤を強化する――そんな期待も膨らんだ。
だがメルケルの「苦い勝利」で欧州の民主主義とEUの統合推進の行方は楽観視できなくなった。現状ではメルケルの続投はむしろEUの結束にマイナスになりかねない。
ドイツの今回の選挙結果を見て、フランスに続きポピュリズム勢力を抑え込めたと思うのは誤りだ。独仏の選挙制度は異なるから単純な比較はできないが、試しにドイツの今回の議会選とフランスの議会選の第1回投票を比べてみると、結果はほとんど変わらない。
フランスもドイツも与党は3分の1前後の票を獲得。フランスの極右政党・国民戦線もドイツのAfDも得票率は13%前後だった。フランスの極左の得票率は14%前後。ドイツの極左政党の得票率は9%前後にすぎなかったが、緑の党には中道に加え極左グループが含まれているから、極右と極左のポピュリズム勢力はドイツでもフランスでも同程度の力を持つとみていい。
この記事に関連するニュース
-
パリ五輪は無事に開催されるのか…「都知事選以上の大番狂わせ」が起きたフランス総選挙のカオスぶり
プレジデントオンライン / 2024年7月15日 10時15分
-
ドイツの極右政党、新極右会派を発足、欧州議会の極右勢力の再編続く(EU、ドイツ、ポーランド、フランス、チェコ、スロバキア、ハンガリー)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月12日 15時30分
-
仏左派連合、中道連合との連携否定 公約実現に意欲
ロイター / 2024年7月9日 18時53分
-
日本車メーカーの「ドル箱市場」を中国EVが侵食…「世界一の自動車大国」の座を奪われた日本がやるべきこと
プレジデントオンライン / 2024年7月4日 7時15分
-
仏マクロンの決断は第3次世界大戦を招きうるか 6月30日にフランス総選挙、ロシア派兵は実現するか
東洋経済オンライン / 2024年6月23日 10時0分
ランキング
-
1中国経済にトランプショック再び!? 「中国車の輸入阻止」綱領採択、バンス氏との強硬シナリオ 「60%の関税、本気で仕掛ける可能性」
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月19日 6時30分
-
2「13日に注目」投稿か 銃撃のクルックス容疑者
共同通信 / 2024年7月18日 22時43分
-
3バイデン氏、大統領選撤退「真剣に検討」 時間の問題か=関係筋
ロイター / 2024年7月19日 8時28分
-
4盟友ペロシ氏、バイデン氏に選挙戦継続への懸念伝達…党内では撤退論封じ込め狙い「早期指名」計画も
読売新聞 / 2024年7月19日 2時17分
-
5女児がオオカミにかまれる、自然公園の一部閉鎖 オランダ
AFPBB News / 2024年7月19日 11時35分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください