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孫政才、一帯一路が生む新たな腐敗の構図

ニューズウィーク日本版 / 2017年10月11日 17時45分

2014年、重慶市政府と億賛普は戦略パートナーとして提携に合意し署名した。孫政才はそのとき、億賛普の董事長・羅峰(らほう)と会談している。2016年2月になると、孫政才は再び億賛普ビッグ・データ企業を訪れて、当該企業と全球(グローバル)港口聯盟を構築することに参画し、クロスボーダー支払い決済による巨額の収益を絶賛している。

ところが、今年4月、億賛普の42%の持ち株を保有する羅峰と、38%を保有する法人代表の黄蘇支と、突然連絡が取れなくなった。北京の金融大街1号に位置する億賛普の本部には、数十名の職員がいるだけで、そのカウンターパートである重慶市の銭宝集団とIBSの看板をかかげるオフィスには誰もいないという情況に突然陥ったのである。

この企業は「シルクロード億商」とか「シルクロード国際銀行」あるいは「一帯一路クロスボード支払聯合会」などの看板を掛けていたため、重慶市政府の信用を得やすく、孫政才などの「権利の手」によって暴利をむさぼる結果となったというわけだ。

中国腐敗の構図の輸出

そのようなわけで、孫政才関連の重慶市の一連の党幹部および企業関係者がお縄となり、党代表を取り消されたのであって、習近平の「政敵打倒」などという権力闘争の構図ではない。

権力闘争などをしているゆとりがあれば、まだ結構なことだが、中華民族の命運をかけた一帯一路に、このような新たな腐敗の抜け穴が生じたとなれば、「中華民族の偉大なる復興」も「中国の夢」も実現し得ないだろう。

要するに、一党支配体制を終わらせない限り、中国がグローバルになればなるほど「腐敗の構図の輸出」も同時に起きることになり、習近平政権の夢は挫折する。

こんな恐ろしいことがあっては、政権維持は出来ない。習近平はきっと新たな腐敗の構図に震えるほど怒り、終わりのない戦いに怯えていることだろう。一党支配体制が終わらない限り、「紅い中国」は、やはり腐敗によって亡ぶしかないのである。


[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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