「新時代の中国」は世界の人権を踏みにじる
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月19日 16時30分
2013年の人権理事会では反体制派に対する中国当局の弾圧をキューバの代表が抜け抜けと賞賛。「犯罪的な活動を取り締まり、中国の主権を守る、称賛されるべき措置」だとした。中国は「人権分野での業績で賞賛されるキューバ」に賛辞を返した。国連の人権機関は政治的に中立な立場で、事実に基づき各国の人権状況を評価する役割を担うが、中国が友好国と手を組んで煙幕を張るため、本来の役割を果たしにくくなっている。
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中国主導の世界秩序がどんなものになるかを垣間見せてくれるという点で、この報告書は必読だ。人権の擁護など国際的なルールと価値は、大国となった中国の利益のために踏みにじられ、弱小国家ばかりが「人権抑圧国家」のレッテルを張られるいびつな構造が生まれるだろう。民主国家でも、人権抑圧的な政権が誕生すればフルに中国のサポートを得ることになる。
中国の人権問題隠しは、今に始まったことではない。1989年の天安門事件以降、中国当局は批判をかわすことに精力を傾け、おおむね成功してきた。自国の状況を隠すばかりか、北朝鮮や民主化前のミャンマーなどの甚だしい人権抑圧の隠蔽にも加担した。
いま問題なのは、中国の影響力が10~20年前とは比べものにならないほど大きくなっていることだ。自国の策謀や脅しに唯々諾々と従う国々が増えたおかげで、中国は国際的な評判をさほど落とさずに煙幕を張り続けられる。
残念ながら、アメリカのドナルド・トランプ政権は国連の場で中国の人権状況を厳しく問うどころか、国連つぶしに熱心で、事実上中国と同じ穴のムジナになっている。
トーマス・ケロッグ
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