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アメリカを捨てるインド移民

ニューズウィーク日本版 / 2017年10月23日 11時0分

インドの大学を出た人でも、アメリカよりカナダやヨーロッパへの移住を考える人が増えている。身の安全に関する懸念もその要因の1つだ。

今年2月にはカンザス州で、インド人技術者2人が白人の退役軍人に撃たれ、1人が死亡する事件が起きた。犯人は2人に向かって、不法移民ではないかと難癖をつけたという。この事件はインド国内の新聞で連日、大々的に報じられた。



16年度に、アメリカで働くためにH-1Bビザを取得したインド人は12万人以上で、他の国の出身者よりもはるかに多い。毎年抽選で発給される8万5000件のH-1Bビザのほとんどは人材派遣会社の申請によるものだが、そうした会社が技術職に雇用する外国人のほとんどはインド人だ。

何年もの間、マイクロソフトやグーグルなどの大手企業は、必要な能力を有するアメリカ人が足りないと主張し、就労ビザの割り当てを増やすよう政府に申し入れてきた。ただし一方には、技術系の学位を持つアメリカ人はたくさんいて、業界のニーズに応えられるはずだという反論もある。

この4月、トランプは「アメリカ・ファースト」政策の一環として就労ビザ制度の見直しを発表。技術レベルが高く、給与水準も高い外国人だけに就労ビザ発給を限定したいと言い、ビザ取得要件を変更する大統領令に署名した。

こうした政策はアメリカ留学を考えるインド人大学生や大学院生を落胆させるだろうと、シアトルの移民弁護士タミナ・ワトソンは言う。「長期のキャリアを望めないなら、彼らがアメリカに来る理由はなくなる」

アメリカ以外の選択肢

外国人労働者の不満を受けて、ブレント・レニソン弁護士は昨年、ポートランド連邦地方裁判所にH-1Bビザ制度の違法性を訴えた。「このままの状態が続けば、アメリカに来ないことを選ぶ人も出てくる。アメリカで教育を受けた留学生もアメリカに残らなくなる」

このシステムは以前から機能不全に陥っていた。政府機関の官僚主義のせいで就労ビザの発給は既に滞っているため、近年では一流大学の卒業生でさえ就労ビザを取得できる保証はないという。

ビザを取得しても、まだ地位の安定は得られない。雇用者が永住権申請のスポンサーになってくれても、認可が下りるまで何年も待たされる。

ワシントンのシンクタンク、ケイトー研究所の移民政策アナリスト、デービッド・ビールによれば、国内外のインド人200万人がグリーンカードの発給を待っている。システムに変更がない場合には処理に10年以上かかる可能性があるという。

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