小池代表の衆院選最大の誤算とは? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月26日 15時30分
豊洲の問題にしても、地下水がどうという具体的な問題よりも、そうしたハコモノの建設が一部の人々によって決定され、そこに巨額な税金が投入されるという構造に対して、都民は疑問を持ったわけで、この問題をめぐる小池都知事の言動は、そうした都民の「長年積み重なった不信の深層心理」を意識してのものだったと言えます。
ところが、そのような「不信の深層心理」というのは、あくまで「都政の自民党」というローカルなものに向けられているのであって、国政レベルの永田町の自民党はまた別なのです。と言うよりも、都の有権者にとっては「別物」であることを小池氏は見落としていたのではないでしょうか。
例えばですが、森友・加計といった問題についても、小池氏からすれば「権力の行き過ぎ」ということで、都議会自民党へ向かった「不信感」が、そこに重なっていく中で、自分たちは「クリーンな保守」として選んでもらえる、そんな期待もあったのでしょう。
ですが、豊洲や五輪のスケールに比べれば、森友・加計といった問題は、スケールが小さいですし、その小さな問題を執拗に追及する姿勢には左派的なイデオロギー色が染み付いているわけで、「クリーンな保守」からの攻撃の必要性はアピールしなかったのだと思います。
その奥にはもっと深刻な問題が横たわっているのを感じます。もっと一般化して言うなら、都市の地方行政に関しては、有権者は「納税者意識」から「小さな政府論」という感覚を持っているわけですが、国政レベルに関しては違う選択をしているわけです。その選択の背景には3つの問題が指摘できます。
まず指摘できるのは、国防や治安といった問題については、不安感があるので簡素化を求めてはいないという傾向があります。また、疲弊した地方に関しては、「道州制」的なリストラ先行型の「小さな政府論」を求めていくよりは、地方創生というスローガンにあるように、やはり必要な投資はしていくべきだという感覚がうっすらと残っているのかもしれません。
もう一つ、もしかしたら現在の有権者は、例えば2001年に始まる「小泉改革」の時とは違って、「民間活力」への期待値を下げざるを得ないということもあるのでしょう。EVシフトの遅れが顕著な自動車業界、相変わらず米系多国籍企業に席巻されるだけのハイテク業界、製造業における品質の劣化などを見ていると、「規制緩和で民間活力主導の改革」を断行して成長率を押し上げるというチャンスは、少しずつ「過ぎ去って行こうとしている」、そんな感覚があるのかもしれません。
今回の「希望の党」そして「維新の会」もそうですが、この両党の退潮には、「日本における小さな政府論の難しさ」つまり都市のローカル行政では成立した「小さな政府論」を、国政に展開するだけの思想と政策の深まりが足りないという、深刻な問題を露呈していると思われます。
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