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宗教保守派の勝利からスキャンダル騒動へ アラバマ補選のドタバタ - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2017年11月14日 17時0分

その結果として、1回目の投票ではムーア候補38.9%対ストレンジ候補32.8%で勝者なしとなり、2回目の決選投票に持ち込まれた結果、ムーア候補が54.6%を得票して現職のストレンジ候補を破ってしまったのです。

つまり「トランプがバノンに負けた」ということで、メディアは結構騒いだのですが、トランプからして見れば「真正保守のムーア」を別に憎む理由もないので、予備選の後は、あっけらかんとムーアを応援していました。



この補欠選挙は12月12日(火)に設定されているのですが、投票までほぼ1カ月となった11月9日(木)になってワシントン・ポスト紙が大きなスクープを報じました。ムーア候補は、地区の副検事であった30代の時に、4人の未成年女性に対して性的な行為を行った、その中には当時14歳の女性も含まれていたというのです。

本人は「意図的な報道」だとして事実関係を否定、アジア歴訪中のトランプ大統領も「フェイクニュースだ」としてムーア支持を続けているのですが、ワシントンは大騒動になりました。共和党の重鎮議員たちは、次々に「ムーア不支持」を表明したのです。問題が問題だけに「かばっている」とみなされるような言動は出来ないからです。

大統領と同様に「フェイクニュース説」を強く主張し続けたFOXニュースのショーン・ハニティは、大手スポンサーが続々と番組提供を降板する事態に追い込まれました。その中には、ある大手コーヒーメーカーが入っていたのですが、事態に対して怒った宗教保守派、つまりムーア支持者が「コーヒーメーカーを打ちこわす動画」を拡散したりと、関連して様々な騒動が起きています。

問題は、アラバマの公選法では既に「投票用紙に記載する名簿」の変更受け付け期間は終わっているということです。ですから、例えば予備選2位のストレンジ候補と「スイッチする」というのはテクニカルに不可能です。そんな中、ムーア候補は「これは政治的陰謀だ」と叫び続けているのですが、「5番目の女性」が堂々と登場したり、「当時のムーア氏は、未成年の女性を連れてショッピングモールを徘徊するのが有名だった」という地元の証言がゾロゾロ出てきたり、状況はかなり苦しくなってきています。

共和党の内部からも「こうなったら民主党候補に投票するしかない」とか「万が一当選して議事堂にやってきたら、155年ぶりに倫理問題を理由に上院議員除名をやらないといけない」などという声が出ています。

こうした流れで、現在の政治情勢では「まず不可能」だったはずの「アラバマ州の上院1議席が民主党に行く」という可能性が現実味を帯びてきました。現在の連邦上院は52対48で共和党が多数ですが、2018年の中間選挙を前に、この1議席が極めて重たい意味を持ってきています。


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