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武装組織が人質1300人、インドネシア・パプア州で謎の村落占拠事件

ニューズウィーク日本版 / 2017年11月15日 21時40分

さらにフリーポート社の現地子会社でもある「フリーポートインドネシア」や関連する下請けの鉱山開発各社では最低賃金や労働環境を巡る労働争議も頻発している。争議の大半は州外からの労働者とパプア人労働者の待遇格差とされ、今回も人質の中に州外からの鉱山労働者が300人含まれていることから、労働問題が関連している可能性もあるという。



人質の安全優先で長期化の懸念も

いずれにしろ武装集団からは食料を届けること以外に身代金の要求、具体的な政治的要求もなく、犯行動機も集団の性格も判然としない状態が続いている。

インドネシア国軍のガトット・ヌルマンティヨ(Gatot Nurmantyo)司令官は「住民の安全を最優先する立場から説得による解決を目指したい」との考えを示しており、場合によっては解決が長期化する懸念も出ている。

11月12日には人質となっていた住民の中から妊婦が出産のため解放され、村の外に出た。警察はこの妊婦を病院に搬送する一方で、犯行グループや人質の状況などについて詳しく事情を聴いている。

警察は人質の健康状態への懸念から医療チームを占拠された村へ派遣する交渉を現在進めており、地元の有力者やキリスト教関係者が武装集団と直接話し合いを続けているという。

今回の事件は遠隔地の山間部で報道陣も容易に近づけない場所であり、警察による発表以外に現地の様子があまり詳しく伝わらないことや、事件の長期化による社会的、政治的影響も大きくないとの判断から、警察は「説得による解決」を今のところ目指している。その一方で、膠着状態の長期化はフィリピンのマラウィ市の二の舞となる心配もあり「状況次第では一気に強硬手段に出る可能性も否定できない」と現地情勢に詳しい関係者は指摘する。

人権団体の弁護士などからは占拠された村周辺には多数の警察官、兵士が配備されており、人質以外の住民への立ち退きや移動制限などが始まっており、次第に緊張が高まっていることは間違いなさそうだ。

[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など


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大塚智彦(PanAsiaNews)


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