北朝鮮問題、中国の秘策はうまくいくのか――特使派遣の裏側
ニューズウィーク日本版 / 2017年11月20日 17時0分
少なくとも北朝鮮側の歓迎ムードは伝わり、中国を仲介役にする期待はあるものと判断できる。
この結果に関して中国側は
中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は20日、「米韓は中共特使の在朝活動を凝視している」というタイトルの記事を掲載している。その中で「中国は北朝鮮問題の当事者ではなく、当事者はあくまでも米朝両国だ。中国に過剰に期待するな」と弁解した上で、「中朝関係は非常な困難に直面している。一回の訪問で問題が解決することはない」と表明している。
つまり、中国は「これまで練ってきた秘策を実行に移す用意はあるが、しかし一気に解決するというわけにはいかず、スタート地点にようやく立った」と言いたいのだろうと判断される。
北朝鮮はアメリカ本土に着弾できるICBM(大陸間弾道ミサイル)を完成させるまでは話し合いのテーブルに着かず、しかも絶対に核・ミサイル開発を放棄しないことを対話の前提としている。
片やアメリカは、北朝鮮が核・ミサイル開発を完全放棄するまでは対話に応じず、放棄こそが対話の前提条件だとしている。
これではいつまでも平行線をたどり、やがては「圧力」の名の下に戦争に突き進む危険性もはらんでいるのは明らかだろう。経済的制裁には限界があり、アフリカや東南アジア諸国など、北朝鮮と国交を結んでいる国は160数ヵ国あり、抜け道はいくらでもある。
中国やロシアに関しては特定的に監視できても、これらすべてを完全に監視の目から漏れないようにするのは容易ではない。
となれば、中国の「威嚇的条件」を北朝鮮が呑むか否かが、今後の鍵となろう。
それが実現できなかった時のために中国は予防線を張っている。それが環球時報に滲み出ており、また中央テレビ局CCTVがこのニュースを扱わないことにも如実に表れている。
水面下における中朝間の駆け引きから目が離せない。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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