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泥仕合の様相を呈してきた、アメリカの「セクハラ糾弾」合戦 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2017年11月21日 15時15分

ところが、そこへ突き付けられたのは10年前のスキャンダルです。2006年にコメディアンとしてイラクやアフガニスタンなどの米軍基地への慰問ツアーを行った際に、同行した女性タレントが眠っているときに、ふざけて胸を触っているという写真が暴露されました。フランケンの表情は悪戯っ子そのもので、仮に本人が同意した上での「芸」ということならセーフかもしれませんが、被害者が「10年間、この行為で苦しんだ」と言っている以上は、全く申し開きはできません。



フランケンの場合は、さらに第二の被害者女性が名乗り出たり、ハフィントンポストの創業者で、リベラル論客のアリアナ・ハフィントンに対して、「ふざけてお尻を触ったり、胸を触ったりしている」写真が暴露される(但し、ハフィントンは、特にコメントせず)など、窮地に陥った状況です。

さらに11月20日には、アメリカのテレビキャスターとして最も尊敬を集めていた存在として、現在までCBSの朝のニュースと、ブルームバーグの対談番組のホストとして活躍していたチャーリー・ローズに対して、8人の女性がセクハラ行為への告発」を行なっています。告発の内容はかなり深刻なもので、ローズは即時休業に追い込まれています。

そんなわけで、保守とリベラルが、お互いに新たな「容疑者」を必死になって探しているという構図になっているのですが、このトレンドの背景には、一つの強い動機があります。それはリベラル派の間に、「いつの日かトランプ大統領のセクハラ問題について動かぬ証拠を突きつけたい」という目的意識があるということです。つまり、もちろんこの機会に徹底的に「セクハラは悪」という世相を作っていけば、大統領がいつか「ボロを出すだろう」という極めて政治的な計算です。

この問題に関連して、FOXビジネスニュースの経済キャスターであるマリア・バーチロモが騒動を起こしています。バーチロモは、対談相手のリベラル派から「フランケンの疑惑を批判するのなら、トランプ大統領の昔から言われているセクハラ疑惑も問題にすべきだ」と言われたところ「大統領には一切の疑惑はありません」とか「フランケンの場合は決定的な証拠があり、大統領への噂を同列に扱うことはできません」と強く明言して「大炎上」となっているのです。

バーチロモはFOXに移籍する前のCNBC時代には、9.11の同時多発テロで動揺するNYの市場を丹念に報道するなどして人気があり、当時は中道だったのですが、移籍後は局の方針に合わせて保守に転じています。そんなわけで、彼女はアメリカのニュース・メディアでは大変な有名人なのですが、今回の騒動で炎上する中で、多くのリベラル派のフォロワーを一方的にブロックしたことでさらに評判を下げています。

今回の「セクハラ摘発ブーム」を通じて、これまで告発を躊躇してきた女性たちが一斉に発言し出したこと、そしてこの種の被害から女性を守るべきだという社会的合意が強く形成されつつあるのは良いことだと思います。ですが、左右対立の構図の中で、お互いに暴露合戦の泥仕合に陥っているというのもまた事実です。それにしても、アル・フランケンはともかく、チャーリー・ローズまでがスキャンダルに見舞われるとは私にも全く予想外でした。


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