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北朝鮮テロ支援国家再指定を中国はどう受け止めているか?

ニューズウィーク日本版 / 2017年11月22日 22時30分



しかし中国外交部は記者会見で「これに関しては予断を許さない。詳細な事情を掌握した上で改めて述べたい」と回答し、意思表示を避けた。

中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVも、「アメリカが北朝鮮をテロ支援国家と再指定し、新たな独自の追加制裁も発表した」とのみ言っただけで、それ以外に関しては一切、触れていない。

中国共産党系列の「青年報」は、「中国は国連安保理で決議された制裁に関しては完全に履行するが、それ以外の独自制裁に関しては問題の解決につながらないと考えている」という、中国のいつもの見解を報じている。アメリカに関しては、アメリカ国内法である「ロング・アーム管轄権(アメリカのある州の非居住者が、その州と最小限度の接触を有すれば、そのような非居住者に対して、その州の裁判所の司法管轄権が及ぶとする州法)」を国際社会に持ち出すべきではなく、これは米中関係に不利となると釘を刺している。

「余計なお世話だ」という意味だ。

特に、8月に日本が独自に追加制裁を課すとして中国企業名を挙げたことに関しては、中国外交部は「他国から指図される覚えはない」として強烈な不満を表明したことがある。したがって、アメリカの決定に対して、日本が「そうだ、そうだ、その通りだ!」と称賛(追随?)すると、中国は激しい嫌悪感を覚えるであろうことは明らかだ。

中米関係は損なわれていない

このように微妙ながらも、今のところ中米関係は損なわれていないと見ていい。

アメリカ国務省のナウアート(Heather Nauert)報道官も、今般のトランプ政権の決定に関して以下のように述べている。

――新たな制裁は平壌をさらに孤立させるための行動の一つであって、この制裁の中に中国企業が入っていたからと言って、北京が北朝鮮問題を解決する意欲を下げるとは思わない。われわれ(アメリカ)と中国の関係は非常に良好で、この関係が変わることはない。
 
つまり、トランプ政権の一連の動きは、中国から見ても「北朝鮮問題解決のための中国の秘策」を今後も遂行するに当たっての範囲内と見ていいだろう。すなわち、ギリギリではあるものの、中国への援護射撃となっていると、中国は受け取っているとみなしていいということだ。今後、中国外交部からの新たな反応があるかもしれないが、そこに激しい不満が含まれているとすれば、それは日本がトランプ政権の動きを、まるで日本の功績であるかのごときニュアンスで自慢した場合への不満と考えることができよう。

p.s. なお、このコラムを書いた後に中国外交部報道官は追加制裁に関して「一方的な措置には反対する」と表明したが、それほど激しいものではなかった。

[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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