1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

パイロットが足りない! 米軍が任務急増で悲鳴

ニューズウィーク日本版 / 2017年11月25日 16時30分

<長時間労働に度重なる国外任務......相次ぐ米軍の事故は「働き過ぎ」が原因との声が>

「ずばり言おう。週100時間という任務時間は、若い兵士たちにとって長過ぎる」――米上院軍事委員会のジョン・マケイン委員長は11月14日、国防総省高官の候補者指名公聴会でこう指摘した。早急に改善しなければ、今年6月に米海軍が経験したような「悲劇」がさらに増えると警告した。

かつての米海軍パイロットで、ベトナム戦争で5年以上にわたる捕虜生活も経験しているマケインは、現在の米軍の状況を「軍の即応能力の危機」と呼び、予算の少なさにも危機感をあらわにした。

実際、米海軍は今年に入って以降、死傷者を伴う複数の事故を起こしている。マケインも指摘した6月にはイージス艦フィッツジェラルドが日本の沖合でコンテナ船と衝突し、乗組員7人が死亡。8月にはミサイル駆逐艦ジョン・S・マケインがシンガポール沖でタンカーと衝突し、乗組員10人が死亡。11月には原子力空母カール・ビンソンの飛行甲板で艦上機が乗組員に衝突し、1人が重傷を負った。

「これは深刻な問題だ」とマケインは言う。「海軍作戦部長によれば、こうした事故は明らかに防げた可能性がある。そして議会は、(米軍を見殺しにするという)犯罪に近い行為の片棒を担いでいる」

一方でマケインは、パイロットの深刻な人手不足についても指摘した。米空軍が任務遂行のために必要とするパイロットは約2万人。だが現在、その10%に当たる約2000人が不足しており、現役パイロットが長時間の任務を強いられていると、空軍関係者は言う。

退役軍人復帰でも不足

米軍は今、世界各地で数多くの軍事的脅威に対処している。テロ組織ISIS(自称イスラム国)との戦いから北朝鮮に対する圧力に至るまで、各種の事態に対応するには大規模な空軍力が必要だ。



ヘザー・ウィルソン空軍長官も、11月9日に行った毎年恒例の空軍活動報告会見でパイロット不足への懸念を表明。「われわれは軍の人員を、機能しないほど疲弊させている」と、ウィルソンは語った。

「任務の急増が、米空軍の『新常態』になっている。先週会った人物は17回目の国外任務から帰国したという。数年間は対応できるかもしれないが、軍人の家族たちはいずれ、このペースで任務を続けていくのは無理だと判断するようになるだろう」

こうしたなか、ドナルド・トランプ米大統領は10月、パイロット不足の問題を解決するための大統領令に署名した。即戦力のあるパイロットを確保するため、退役したパイロット最大1000人の現役復帰を可能にする内容だ。従来の法律では、陸・海・空軍が一度に復帰させることができる退役軍人の数はわずか25人に制限されていた。

だが空軍は、この大統領令も大幅なパイロット不足の解決策にはならないとの見解を表明した。既に2000人が不足している状態では、退役パイロットを復帰させるだけでは需要を満たせないという。

「柔軟な対応はありがたい。だがわれわれが望んでいるのは、数年だけではなく、長期にわたって働けるパイロットを確保することだ」と、空軍の報道官は14日、FOXニュースに語った。同報道官によれば、空軍では10~20年働くことができるパイロットを探しているという。

朝鮮半島では軍事的緊張が高まっているが、米軍の「敵」は足元に潜んでいるようだ。


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル! ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017.11.28号掲載]
ジョン・ハルティワンガー

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください