ノーベル平和賞と核廃絶論、核不拡散論の関係 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2017年12月13日 12時0分
もちろん、そこに矛盾があるのは確かです。核禁条約批准国は、核兵器禁止の措置が即時に実施されるよう要求しがちです。そのために、現状で認められた保有国5カ国に対しても「即時廃絶」を強く要求する傾向があります。その際に「現保有国と、現非保有国の間には不平等がある」ということを声高に主張することが良くあります。
ですが、この「現保有国はズルい」という主張は、そのまま北朝鮮などの「核兵器保有を企図している国」の主張に重なってしまうわけです。ですから、喫緊の問題として核不拡散ということに神経を使って外交を行っている側としては、この種の発言に対しては距離を置かざるを得ないことになります。
このように、確かに矛盾はあるのですが、誰かが「核兵器の禁止」という政策と「核拡散の防止」という政策の双方の接点に立って、まさに信頼関係を構築するための「汗をかく」必要があるわけです。それならば、その役目は日本が担うべきではないでしょうか?
核兵器禁止と核不拡散という2つの政策は確かに矛盾します。ですが、そこで双方がいがみ合っていては、核兵器保有を志向する勢力の「思う壺」になりかねません。ここは、日本政府として「理想と現実を併せ呑む」格好で核禁条約を批准する、その上で保有国と非保有国の接点という役割を果たしていくべきだと思います。
ICANなどもそこにいたる日本政府の難しい検討過程を見守り、即時批准をしないのは悪であるかのような批判は慎む、そのような形でまずは日本政府とICANが信頼関係を醸成していくのはどうでしょうか? 今回の外務大臣談話は満点ではありませんが、とりあえず落第ではないとして、ICANの方々などは10月からの前進を評価してみてはどうかと思います。
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