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アラバマ補選で民主党が勝利、そのインパクトは? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2017年12月14日 11時30分

一方で、実は共和党の保守本流には「ホッとしている」という感じも見受けられます。まず、上院共和党のボスであるミッチ・マコネル院内総務はムーア不支持でしたし、アラバマのもう1つの上院議席を守っている保守系ベテランのシェルビー議員などは「自分はムーアには投票しない」などと言っていたのです。



そうした態度の背景には面倒な事情がありました。というのは、性的なスキャンダルを抱えたムーア候補が当選したら「すぐに倫理委員会にかけなくてはならない」からです。そうしないと支持者から怒られるし、そうかと言って告発したらしたで共和党の内紛になってしまうわけで、本音としては「負けても仕方がないし、負けたほうがいい」という見方があったのです。大統領の長女であるイヴァンカ氏がムーア批判をしたというのも、ですから大きな問題にはなっていません。

その背景には、2018年の中間選挙への読みがあります。選挙を受けた上院議席は「51対49(無所属含む)」という僅差に民主党が迫っているのは事実です。ですが、次の2018年11月の中間選挙の改選議席33の内訳は「民主党が25、共和党が8」、つまり民主党が2議席増やすには現有議席25を全部守った上で、共和党から2議席を奪い返さなくてはいけないわけです。

ですから、共和党としては、過半数維持は十分に可能という読みをしているのです。1議席は痛いけれども、決定的ではないというわけです。さらにその先の2020年(この議席の本来の改選期)には、「普通の保守系候補」を立てれば今回のような敗北を喫する可能性は低いだろう、という見方もあります。

ただ、今回の選挙が大変に注目されたのは事実ですから、アメリカ社会の全体に、様々な影響を与えているのは間違いありません。まず、何と言っても、社会全体に広がっている「#MeToo」つまり「セクハラを許さない」という運動自体はムーア落選によってさらに勢いづいたと言えるでしょう。

選挙を支援したグループも明暗が分かれました。中でも、投票日の前日にアラバマ入りしてムーア候補を応援し、同時に自身の主宰する保守サイト「ブライトバート」でムーア支持を訴えた、スティーブン・バノン氏(元ホワイトハウス首席戦略官)は、これで大きく評判を下げました。

反対に、民主党陣営では黒人票が「動いた」という見方が出ています。CNNの出口調査では、黒人男性の92%、黒人女性の97%がジョーンズ候補に投票しただけでなく、投票率も高かったようです。その点ではジョーンズ候補の応援演説に入った、コーリィ・ブッカー上院議員(民主、ニュージャージー州)の株が上昇しています。

その民主党の側は、ここへ来て「トランプ大統領自身の過去の性的なスキャンダル」の告発を急いでいます。ですが、大統領のキャラクターがアメリカ社会に浸透している中では、今ひとつ「空回り」している感じが拭えません。ですから今回の補選における民主党の勝利というのは、大きな意味合いはあるものの、過大評価は禁物ということだと思います。

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