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ひき肉の偽装表示も99%の精度で暴く

ニューズウィーク日本版 / 2017年12月16日 14時0分

<この肉は本当にラベルどおりで混ぜ物なし? そんな不安を打ち消すための研究が進んでいる>

肉を食べる人は、たいていある種の「賭け」をしている。自分の食べている肉が、ラベルに書かれているとおりのものかどうかを知る手だてはほとんどないからだ。

そこでカナダのブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)のチームは、肉製品の内容を識別する方法を研究中。肉製品が汚染されていたり、腸など嫌な臭いのする部位や、ネズミや馬など他の動物の肉が混入されていたりするのを正確に識別できる装置を開発した。

この技術はとてもシンプルだ。肉の分子が発するスペクトルというエネルギー信号を捕捉するレーザー分光器を使っている。スペクトルは肉の内部の物質の「イメージ」を正確に反映する。

動物の肉は部位によって化学組成が異なるため、体の各部位の肉は別々のスペクトルを作り出し、レーザーに異なった反応を示す。研究者はこれらのスペクトルを今まで蓄えたスペクトルのデータベースと照合して、その肉が動物のどの部分かを特定。どの動物のどの部位の肉が、どれだけの割合で含まれているかが99%の精度で分かる。

「研究に使ったレーザー分光器は、市販されている装置。この研究では、データベースの作成に重点を置いた」と、プロジェクトの主任研究者で、UBC土地・食料システム学科の博士課程に在籍する胡雅西(フー・ヤーシー)は言う。

今のところ胡らが作成したデータベースには、6つの異なる種類の臓器が含まれている。「牛肉の中に何十種類もの混ぜ物が含まれている可能性を考えれば、もっとデータベースを充実させ、販売されている製品を確実に分析できるようにしなくてはいけない」と、彼女は語る。



肉の混ぜ物を特定するにはDNA検査などの方法もある。しかしこの方法は複雑で、ひき肉製品の内容を完全に調べるのは難しい。さらにDNA検査では、牛ひき肉に馬やネズミの肉が含まれているかどうかは分かるが、牛ひき肉に牛の臓物が含まれているかどうかは分からない。

動物の腸を食べて人が死ぬことはない。しかも動物の臓物は、レバーのパテやブラックプディング(豚の血と脂で作られる)など、多くのメニューに使われている。

しかし臓物でも、一見どこの肉か分からないものがある。その場合、本来なら安い部位が高価なものと偽って売られる恐れもある。こうして発生する食品偽装を、UBCの研究チームは防止しようとしている。

現時点で、この装置は政府や業界団体の検査など、ごく一部でのみ使われている。しかしいずれは、消費者が家庭で使えるシンプルで価格も手頃な製品を作りたいと胡らは考えている。

「もっと多くの不純物のスペクトル情報を集めたデータベースが完成すれば、市販されているひき肉を調べるのにも使えるようになるだろう」

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[2017.12.19号掲載]
デーナ・ダビー

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