火山噴火に苦しむバリ島、必死の観光半額セール?
ニューズウィーク日本版 / 2017年12月20日 16時0分
噴火により空港閉鎖が長期化した場合の外国人観光客のインドネシア滞在ビザについても無料で延長手続きを実施することで入国管理局とすでに協議しているという。
こうした政府や州政府、観光関連協会などの必死のPRで、どこまで観光客がバリ島に戻ってくるかは不透明だ。というのもバリ島では現在も火山性微動が続いており、政府の火山危険度も最大のレベル4が維持されている。火口から半径10キロ圏内は立ち入り禁止、避難区域に指定されており、警戒監視活動は今も続いている。
現地では6万人が避難所生活
この影響でアグン山周辺地域の住民など約6万人が依然として225か所の避難所で避難生活を続けているという現実もある。インドネシアの新聞やテレビのニュースはこうした避難所での不便な生活を伝えており、少なくともインドネシア人はこの時期にあえてバリを訪れようとは考えていないとみられる。
さらにかつての日本人、オーストラリア人というバリ島を訪れる主要外国人観光客に代わって近年急増していた中国人観光客が噴火以降に激減していることもバリ観光業に大きな打撃を与えている。
こうしたことからインドネシア政府はこれから始まる長期休暇を海外で過ごそうとする外国人観光客を主要ターゲットにして、この「割引作戦」と「万が一噴火の際の無料サービス」を宣伝材料にして特にオーストラリア人、中国人そして日本人にバリ島に戻ってきてくれることを期待している。
【訂正】当初、「『アリフ・ヤフヤ観光相はこれからのクリスマス、年末年始の観光シーズンを迎えるにあたって「バリに観光客を呼び戻すために40~50%の割引を適用する』と発表した」とあったのは誤りでしたので、本文中で訂正しました。お詫び申し上げます。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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