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ブラックバイトの被害が多いのは、コンビニ、居酒屋、学習塾

ニューズウィーク日本版 / 2017年12月27日 11時45分

<人手不足が深刻になるなか、年中無休・24時間営業の便利さは多くの学生バイトに犠牲を強いることで成り立っている>

年末年始は学生が「ブラックバイト」の被害に遭いやすい時期だ。ケーキやおせち料理の予約の販売ノルマを課せられ、達成できなければ買い取りを強いられる......。このような被害が毎年、相次いでいる。

2015年に厚生労働省が実施した「大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査」では、学生のブラックバイト被害の実態が明らかにされている。バイト経験のある学生(大学生、短大生、専門学校生、大学院生)に、不当労働行為の被害経験を尋ねる調査だ。

それによると「合意した以上の仕事をさせられた」と回答した学生が13.4%、「合意した以上のシフトを入れられた」が14.8%と多くなっている。多くの学生が従事するコンビニバイトでは、後者の被害率は22.6%と高い。上記のように「商品やサービスの買い取りを強要された」学生も11.6%いる。

不当行為の被害率は業種によってかなり違っている。主な2つ(合意した以上の仕事、シフト)の被害経験率をとった座標上に、28の業種を配置すると<図1>のようになる。ブラックバイトの業界俯瞰図だ。



右上にあるのはブラック度が高い業種で、円が大きいメインバイト(ファーストフード、コンビニ等。回答人数が多い)はこのゾーンにある。年中無休・24時間営業の業種が多く、人手不足が激しいことが背景にあるのだろう。いつ行っても店が開いている便利さは、従業員(多くが学生バイト)に犠牲を強いることで成り立っている。

学習塾もメインバイトの1つだが、個別指導の講師をした学生の35.2%が「準備や片付けに賃金が払われなかった」と訴えている。授業のコマ数で賃金が決定され、授業の準備に要する労働が無給というケースだ。もっと悪質な被害もあり、筆者の教え子には「最初の2週間は研修期間なので給与は出ない」と言われた学生がいる。完全な法律違反だ。



家計が苦しく親に頼れない学生が増え、その一方で産業界は人手不足。双方の条件がマッチングして、アルバイトをする学生の比率は年々上がっている。<図2>は、通学者(学生)のうち、通学の傍らで仕事をしている学生の割合の年齢カーブだ。



どの年齢でも学生のアルバイト実施率は上昇している。大学生ではその傾向が顕著で、入学年齢の19歳を見ると、1985年では9.7%だったが2015年では24.4%に増えている。都市部ではもっと高い。<図1>でみたブラックバイトの被害は、ごく一部の学生の問題ではない。

これからアルバイトをする新入生に対し、労働法規のガイダンスをする大学が増えているが、これは非常に重要なことだ。初年次の必修科目にしてもいいかもしれない。やがては社会に出ていく全ての学生にとって必須の知識だろう。こうした法知識があることで、不当な要求に対して「No」と言えるようになる。

過剰なサービスを競い合う産業界の風潮も変えなければならない。「24時間営業はやめよう」「即日配達はやめよう」「お客様を神様と言うのはやめよう」。来年はこういうフレーズを合言葉にしてもいいのではないだろうか。

<資料:厚労省「大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査」(2015年11月)、
    総務省『国勢調査』>


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舞田敏彦(教育社会学者)

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