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今の日本で子を持つことは「ぜいたく」なのか?

ニューズウィーク日本版 / 2018年1月11日 15時20分



(1)は、女性が結婚相手の男性に高収入を求めることも背景にあるが、女性は結婚したり子育てしたりすると稼げなくなるので、そうならざるを得ないのが現実だ。<図1>は、正社員の既婚者・未婚者の年収カーブを男女で分けて見たものだ。



男性では未婚者より既婚者が高いが、女性は逆になっている。未婚者のカーブは男女でほぼ同じだが、既婚者では差が大きい。結婚がキャリアに及ぼすインパクトは、男女で全く正反対に作用していることが分かる。

男女の収入格差の是正や、保育所の増設など、女性の社会進出を促す条件を整える対策が必要とされている。

(2)については言わずもがなだ。日本の教育費は非常に高く、通常のコースでも、子を大学まで出すのに1000万円以上の費用がかかる。子を持てるかどうかが、経済力とリンクするのは当然だ。

「結婚・出産なんてぜいたく」。こういう社会は、いかにもおかしい。「貧乏人の子だくさん」という言葉があったように、日本も戦後初期の頃まではそうではなかった。自営業や家族従業が多く、子は労働力と位置付けられ、今とは違い高校・大学進学率も低く、教育費もかからなかった。

生活環境が変化した現在では、当然のように国の支援が必要となる。教育の無償化は、子育て世帯の教育費(支出)の軽減策だが、その一方で子育て世帯の収入を増やす施策も欠かせない。児童手当のような支給型に加え、夫婦二馬力で稼げるようにする政策だ。

その一つが保育所の増設(保育士の待遇改善)だが、昨年末に公表された「新しい経済政策パッケージ」を見ると、この部分は蔑ろにされている。保育士の月収を3000円程度上げるだけでは、「焼け石に水」でしかない。

男性の収入と子がいる比率の強い関連<表1>は、稼ぎの担い手としての役割がもっぱら男性に背負わされていることの表れだ。少子化の克服には、まずこうした現状を変えなければならない。

<資料:OECD「PIAAC 2012」、
    総務省『就業構造基本調査』(2012年)>


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舞田敏彦(教育社会学者)


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