南北対話「朝鮮民族の団結強化」に中国複雑
ニューズウィーク日本版 / 2018年1月12日 15時30分
しかし「民族」という「血のつながり」へのノスタルジーには断ち切れないものがある。
グローバリゼーションが進めば進むほど、人類は「自己の民族のアイデンティティ」を求める方向に動いている。中東では特に顕著だ。
朝鮮族とて例外ではない。
もし隣接する朝鮮半島に一つの国家「朝鮮」が誕生すれば、在中国の中国籍朝鮮族は「民族の統一」を求めて「朝鮮」に戻るか、その過程で「民族独立」の兆しを示すかもしれない。
万一にも中国籍朝鮮族が独立の方向への動きを少しでも見せれば、ウィグル族やチベット族など、他の少数民族も独立を叫び始める可能性が大きい。
そのようなことになったら、中国共産党の一党支配体制が崩壊する。
中国のその辺の事情を熟知している北朝鮮は、「お前の思うようにはさせないぞ」というシグナルを中国に対して発するためにも、この「わが民族」を強調したものと思うのである。
習近平国家主席が、韓国の文在寅大統領とは電話会談をして南北対話を祝福しているにもかかわらず、軍事同盟国である北朝鮮の金正恩委員長に対しては、この段階に至ってもなお、電話会談さえしていない背景の一つには、この「わが民族」という強調があるとみなしていいだろう。中国の複雑な心境が透けて見える。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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