米太陽光パネル大手が国内投資計画を延期、トランプのセーフガードで被害被るとして
ニューズウィーク日本版 / 2018年1月29日 17時28分
<アメリカの産業と雇用を守るはずの緊急輸入制限に、国内から悲鳴>
米太陽光パネル製造大手サンパワーが、アメリカの工場拡張に伴う2000億ドルの投資計画を延期すると発表した。太陽光パネルの輸入急増が国内産業に大きな損害を与えたとしてドナルド・トランプ米政権が1月22日に緊急輸入制限(セーフガード)を発動し、輸入太陽光パネルに高い関税がかけられることになったのに対応したもの。追加関税は2月7日から適用開始の予定。
サンパワーは輸入太陽光パネルにかけられる30%の関税について、適用除外を要求している。トランプ政権によるセーフガードの発動には、中国勢などの割安な海外メーカーの攻勢から国内の太陽光パネルメーカーと雇用を守る意図があるが、サンパワーは太陽光パネルの大半をフィリピンとメキシコで生産しているため逆に痛手となる。
米国内の大半の太陽光パネルメーカーは中国製と直接競合する汎用パネルを作っているが、サンパワーのパネルはアメリカで生まれた高付加価値技術を使ったものなので、部品としての太陽光パネルを輸入する際には関税の適用除外を受けるべきだと言う。輸入関税の適用を免除されれば、カリフォルニア州とテキサス州にある工場の事業拡大を継続できる、と主張している。
米太陽光発電に大打撃
「セーフガードの発動により、トランプ政権が常にアメリカの労働者や農家、牧場経営者、企業を守る立場であることがはっきりした」と、米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は1月22日に声明を発表したばかり。
だが太陽光発電産業の関係者は、セーフガードが発動されれば太陽光発電にかかるコストが跳ね上がり、大量解雇につながるとみている。サンパワーのトム・ワーナーCEO(最高経営責任者)はロイター通信に対し、関税が適用されれば大打撃を被ると言った。
「適用除外になるか分かる前に関税の適用が始まれば、2000億ドルの投資は中止するしかない」「仮定の話ではない。実際に人も雇っていた計画を、止めることになる」
太陽光パネルへのセーフガードの発動期間は4年間。1年目は30%の関税がかけられ、その後は毎年5%ずつ引き下げられる。
アメリカにおける太陽光発電企業の大半は、太陽光パネル調達の80%を海外メーカーからの輸入に頼る。セーフガードの発動は、市場規模280億ドルの業界に大惨事をもたらすとみられている。米誌フォーブスによれば、サンパワーは大きな打撃を受け、米テスラや米ファースト・ソーラーといったライバル企業にシェアを奪われる恐れがある。
米ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンスの試算によれば、セーフガードが発動されればアメリカの太陽光発電所のコストは10%増加する見込みだ。
中国商務省は1月23日、トランプ政権の決定は救済措置の「乱用」として、強烈な不満を表明した。
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ベアトリス・デュパイ
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