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鳩山由紀夫氏が象徴する戦後日本の「反米左派」 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2018年2月13日 15時30分

ですが、学生や院生のような若い世代には、そのような「お約束」は通用しないばかりか、より複雑さを増している国際社会の中で、鳩山氏のスピーチには「言いたいこと」が沢山あったようです。



質疑応答で質問に立った若者たちは、日本語で丁寧に挨拶したり、基本的にはとても礼儀正しかったのですが、彼らの発想法は「お約束」から自由であり、ある意味では鳩山氏のような「やや過去」に属する言論には不満を持っているようでした。

最初の学生は「鳩山氏はトランプ大統領に批判的だが、あなたの行った政治も十分にポピュリズム的であったし、自国中心主義だったし、実際に減税もやったし、十分にトランプ政治とソックリに見えるのですが、どう思われますか?」といきなり突っ込んだのでした。場内からは拍手も起きていました。

これに対して鳩山氏は、質問の内容が分からないフリをして「米国の大統領制では、政治任用で高級官僚が総入れ替えになる。これはいい制度と思うが、現政権ではポストに空席が目立つのが残念だ」などというトンチンカンな回答をしていました。

別の学生は「友愛に基づくリージョナリズムというのは興味深い考えだが、現在は排他的な民族主義が跋扈する時代であり、対抗するのは難しいのでは?」というこれまた厳しい質問をしていましたが、これには鳩山氏は「その通り」とアッサリ白旗を挙げていて、場内はこの時はちょっと白けた感じになってしまいました。

さらに「日本の自立というのは自主防衛であり、憲法改正につながるのでは?」という質問に対しては「憲法は守る。地位協定は良くないので改定する」という左派の教科書通りの対応。さらに「日本の自立は近隣諸国への脅威では?」という問いに対しては、「諸悪の根源は集団的自衛権で、これを否定すれば近隣諸国への脅威にならない」というこれまた古典的なポジショントークに終わっていました。

全体として、学生たちのシャープな質問への対応は十分ではありませんでしたが、鳩山氏の誠実な人柄は場内に伝わったようで、退場する際には暖かい拍手が惜しみなく送られていたのが印象的でした。

日本にはそのような世代があり、そのような主張があるということを含めて多様性のある社会としてアメリカで受け止められているのは悪いことではなく、鳩山氏の人柄が愛されたことも含めて、この日のイベントの意義は全うできたのだと思います。

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