広がる「工作員妄想」~三浦瑠麗氏発言の背景~
ニューズウィーク日本版 / 2018年2月14日 20時40分
では僻地ではどうなのかと言えば、実際に昨年、北海道の無人島・松前小島で窃盗を働いた北朝鮮人民が存在したように、むしろ日本のような太平洋ベルトにその人口が密集している国家では、その可能性は高いと言わざるを得ない。それでも我が公安、警察の目を欺いて、「スリーパーセル」などという特殊工作員が今やおそしと、その決起を待っているというのは考えづらい。
地方であればあるほど外部からの闖入者に排外的で、不審者はすぐに通報を受けるのは自明である。欧米のように、多種多様な人種があらゆる地域に流動している国家と日本とでは、テロリストの潜伏に関する根本条件がそもそも違っている。
不可解な官憲不信
北朝鮮の工作員は、かつてこの国に存在し、日本人拉致という非道な犯罪を働いた。そして、その残滓は現在でも小なり、存在すると思われる。だが、それに対応する警察力、公安の調査力もかつてに比べれば格段に向上した。
何のために安倍内閣が通信傍受法やテロ等準備罪を成立させたのだろうか。政権が、テロリストに対抗する法整備を行うたびに、「国内における北への包囲網は盤石になり、朝鮮総連は瀕死の情勢である」と血気盛んに言うのに、片方では警察と公安の目をすり抜けて「スリーパーセル」が潜伏しているという。
日本の警察は世界で最も優秀、現場は頑張っている、と称揚する割に、肝心なときには我が公安や警察の実行力を信用していない。この逆転心理は、誠に不可思議である。三浦氏のテロに対する危機意識の惹起は、一般論として正しいだろうが、もっと官憲や政府の「良い意味」での努力に信頼を置いてはどうだろうか。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]
古谷経衡(ふるやつねひら)文筆家。1982年北海道生まれ。立命館大文学部卒。日本ペンクラブ正会員、NPO法人江東映像文化振興事業団理事長。新著「日本を蝕む『極論』の正体」 (新潮新書)の他、「草食系のための対米自立論」(小学館)、「ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか」(コアマガジン)、「左翼も右翼もウソばかり」(新潮社)、「ネット右翼の終わり」(晶文社)、「戦後イデオロギーは日本人を幸せにしたか」(イーストプレス)など著書多数。
古谷経衡(文筆家)
この記事に関連するニュース
-
元米政府高官の外交政策専門家を起訴、未登録で韓国政府の工作活動
ロイター / 2024年7月17日 9時20分
-
「よど号」乗っ取り北朝鮮に 日本初のハイジャック事件は現在も国際手配 警視庁150年 55/150
産経ニュース / 2024年7月17日 7時0分
-
岩田明子 さくらリポート トランプ氏再任なら懸念される「北朝鮮外交」拉致問題解決を迫ることができるのか 暗殺未遂事件、自民総裁選にも影響
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月17日 6時30分
-
職場に中傷電話、マイカー損壊… 復讐代行屋の元「工作員」が明かす裏稼業の実態とリスク
産経ニュース / 2024年7月9日 8時0分
-
先行き不透明な日朝関係、首脳会談が実現すればぜひ拉致問題を詩で
Record China / 2024年6月24日 14時30分
ランキング
-
1米副大統領候補のバンス氏、台湾へのパトリオット供与遅れを批判「ウクライナのせい」
産経ニュース / 2024年7月17日 14時38分
-
2トランプ氏は「神の手に守られた救世主」 暗殺未遂、個人崇拝に拍車
AFPBB News / 2024年7月17日 16時29分
-
3「将軍」最多25ノミネート=主演の真田広之さん候補―米エミー賞
時事通信 / 2024年7月18日 4時53分
-
4韓国でLINEユーザーが急増した理由 日本への反発?
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月17日 15時55分
-
5ウクライナ侵略開始後、動員や弾圧避けるためロシアから65万人流出か…露独立系メディア集計
読売新聞 / 2024年7月17日 18時23分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください