強い欧州を目指すマクロン「第3の道」
ニューズウィーク日本版 / 2018年2月19日 16時35分
マクロンのアプローチはどちらとも違う。グローバル化の否定でも無条件の推進でもなく、その中間を行こうとする。それがヨーロッパにおけるフランスの地位を高め、世界におけるヨーロッパの地位を強化する唯一の道と信ずるからだ。
まず国内では、もっぱら市場寄りの改革を推し進めている。いい例が17年9月の労働法改正だ(ポピュリズムの脅威を考慮して、一部に保護主義的な要素を残しているが)。
社会政策はどうか。同性婚などの扱いについてはリベラルな立場だが、移民問題では保守的だ。フランスに難民申請する人の数を減らそうとする試みが、それを表している。
EUについてはどうか。マクロンが掲げるのは「ヨーロッパの人を守る1つのヨーロッパ」だ。EU域内での単一自由市場の実現を望む一方で、中国をはじめとする新興国から安価な製品がEU市場に大量流入する事態は防ごうとしている。
EUの財政統合の深化にはドイツが消極的なので、マクロンが望むようなユーロ圏改革が実現される可能性は(少なくとも短期的には)低いだろう。彼が求める防衛面での連携強化についても、NATOとの調整やEU離脱後のイギリスの役割をめぐる問題の解決が必要だ。
とはいえ、マクロンが今や国際舞台で最も注目を集めるヨーロッパの指導者であることは事実。彼の外交スタイルはおおむね多国間主義だが、EU域内での価値観共有に重点を置く一方で、欧米以外の国に価値観の共有を押し付けてはいない。この幅広くざっくりとしたアプローチが、気候変動など真に世界規模の問題に関し、国際社会を主導していく上で有利に働く。
気候変動の問題では、マクロンの立場はトランプ政権の見解と相いれない。しかしトランプを敵に回すことは避けてきた。同様に、ロシアのプロパガンダに強く反発する一方、ロシアを孤立させるのは危険だと論じてきた。中国に対しては経済関係を優先させ、「一帯一路」構想への支持を表明する一方、人権問題には触れずにいる。
中東については、アメリカほど二律背反的な立場を取っていない。近年のどの指導者よりもイランとの関係修復に意欲を示しており、サウジアラビアの強権的な姿勢(カタールとの断交や、レバノンのサード・ハリリ首相に対する辞任の強要など)には反発する一方で、同国の若き皇太子ムハンマド・ビン・サルマンとは良好な関係を維持している。
ポピュリズムに頼らない
少なくとも現時点で、フランスが国内外で勢いを盛り返していること、そしてマクロンが国際舞台で(ドイツの不在を利して)大きな存在感を放っていることは間違いない。
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