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習近平長期政権に向けた改憲の狙いは?――中国政府高官を単独取材

ニューズウィーク日本版 / 2018年2月26日 17時0分

A:それは全くその通りだ。だから正常な手続きとして憲法を改正するのは、むしろ法治を重んじていることになる。



Q:聞こえはいいが、任期を設けたのは毛沢東の独裁により、文化大革命などの悲劇が起き、中国が壊滅的な打撃を受けたからで、現在の常委(チャイナ・セブン)にも習近平に抑えを掛ける人物はいない。となれば、毛沢東の愚は繰り返さないとしても、やはり独裁になるのは確かだ。中国にとって、いかなるメリットもないではないか。

A:いや、メリットはある。残念ながら中共政権における腐敗は底なしだ。これを喰い止めるには絶大な権力が必要で、一般党員や党幹部が「恐れを抱く存在」が必要だ。

Q:では、腐敗を撲滅して、一党支配体制を何としても維持しなければならないために憲法を改正するということになるのか?

A:そうだ、その通りだ。

Q:しかし、中国共産党の一党支配体制を終わらせれば、特権階級が無くなるので腐敗も無くなるのではないのか?

A:それは否定しない。しかし人民は中国が「富強」になることを望んでいる。もし習近平に中国を「富強」の道へと導く力があれば、人民は習近平を支持するだろう。しかしもし、個人や特定の利益集団のために人民や国家の利益に損害を与えるようなことがあれば、必ず人民は立ち上がって革命を起こし、そのような政府と執政党を転覆させ、国家が崩壊する道へと突き進むことになる。

Q:今の人民にそこまでの気概があるだろうか?そもそも転覆運動のわずかな兆しでも見つけると、すぐに逮捕してその芽を摘んでしまっているではないか。

A:いや、人民は、そこまでバカではない。私自身、党員でもあるが、人民の一人でもある。本気で転覆させようと思えば実行できる。要は、ひとことで言うなら、腐敗を撲滅させるために最高指導者は絶大な権力を握っている必要があり、中共による一党支配体制を維持するためには、腐敗を撲滅する必要がある。そうでないと中国は「社会主義国家」という名称を返上しなければならないことになる。

Q:では、中国が民主化して西側諸国の価値観を導入しないようにするための布石だということなのか?

A:そうだ。その通りだ。

Q:中国の現状は、とても「社会主義国家」とは思えないが、それを本気で「社会主義国家」にしていこうというのが、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義国家」の理念の一つと考えているのか?

A:まさに、その通りだ。

──以上だ。良い結果を招くとはとても思えないが、一応、中国政府側の「個人的見解」をご紹介した。長文になったので、説明は省く。



[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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