インドネシアで「麻薬緊急事態」──今年2カ月で昨年を超える押収量に
ニューズウィーク日本版 / 2018年2月28日 15時0分
そして最近の麻薬事犯に外国人が関係するケースが増加していることを念頭に「特に外国人の麻薬事犯容疑者には断固とした姿勢で対処するように」と強調した。
国家警察ではマリファナ、覚せい剤、エクスタシーなどの麻薬はその大半が外国人によって海外から持ち込まれているとみて、外国人の麻薬犯罪者の逮捕、摘発に力をいれている。
インドネシアでは2017年7月にジョコ・ウィドド大統領が麻薬犯罪容疑者に対し逮捕に抵抗した場合は射殺も辞さないとの姿勢を明らかにしており、今回のティト長官の発言は大統領発言の徹底を指示したものといえる。
芸能界も麻薬汚染
インドネシアではほぼ毎日、麻薬犯罪に関するニュースが流れている。特に外国人と並んで歌手や俳優といった芸能人の麻薬犯罪摘発が増えている。
2017年3月にはインドネシアの演歌ともいうべきダンドゥットの歌手で俳優のリド・ローマ容疑者が覚せい剤使用容疑で逮捕され、今年2月16日にはダンドゥットの女王といわれる歌手エルフィ・スカエシさんの3人の子供が麻薬取締法違反容疑で逮捕され、26日にはスカエシさん自身が参考人として警察の事情聴取を受けた。
このほかにも芸能人の逮捕は枚挙にいとまがなく、インドネシア国会では「全ての芸能人に尿検査を実施すべきだ」との意見が検討されたこともある。こうした動きに対し芸能人有志が「麻薬根絶宣言」をするなど、芸能界も麻薬問題で揺れている。
インドネシアで流通している麻薬の大半は中国や台湾、香港からフィリピンを経由して密輸されるのが主要ルートだった。だが、フィリピンのドゥテルテ大統領の方針で麻薬犯罪者の現場での射殺を容認する超法規的殺人が増え、フィリピン経由が減少、台湾などから船で直接インドネシアに流入する新ルートが構築されつつあるという。
さらにカリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)の陸路でマレーシア側からインドネシア側への密輸も増加しており、国境地帯を管轄するBNN支部は人員や装備を強化して摘発に努めている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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