トランプ政権「世界の民主化運動を支援するお金はもうない」
ニューズウィーク日本版 / 2018年3月8日 19時20分
<アメリカ政府の手先、と疑いの目を向けられながらも、旧共産圏諸国の民主化を支援するなど功績のあったNEDがなくなる?>
米国務省が、全米民主主義基金(NED)の予算を大幅に削減しようとしている。親米の民主主義を広げるため、世界中のメディアや労働組合、人権団体に資金提供を行ってきたNPOだ。
ドナルド・トランプ米政権が2月に発表した2019会計年度(18年10月~19年9月)の予算教書に沿って、国務省はNEDの予算を2018年度の1億6800万ドルから6700万ドルへと3分の1まで縮小する方針だ。さらに、全米民主研究所(NDI)や国際共和研究所(IRI)などNEDの中核となってきた組織に個別に割り当ててきた予算も、今後は米国務省の一般予算に組み入れたい、としている。
NEDの予算削減や見直しを、米議会が承認するかどうかは不明だが、もし認められれば、トランプ政権は海外の民主化運動を見捨てた、という誹りを免れないだろう。
「今回の削減案は大打撃だが、驚きはない。最終的に決めるのは議会だ」と、NEDのカール・ガーシュマン会長は本誌に語った。「ただNEDを骨抜きにすれば、ロナルド・レーガン元米政権のレガシー(遺産)を葬り去ることになり、政治的にも将来的にもあまりに短絡的だ」
「オープンなCIA」の位置づけ
なぜなら、NEDの予算が削減されれば「海外で同じ価値観を共有し、権力と戦う勇敢な民衆の支援からアメリカが手を引いた、というシグナルを世界中に送ることになる」さらにガーシュマンは米紙ワシントン・ポストの取材に語った。
トランプ政権は米国務省の2019年の予算を2017年度比で25%削減する方針だ。
NEDは1983年にレーガン元米大統領の特命で設立された。当時、米中央情報局(CIA)などの米政府機関は、海外の親米派への資金提供や援助を秘密裏に行ってきたとして、激しく批判されていた。
「今我々がやっていることは、25年前にCIAが秘密裏にやっていたのと同じことだ」と、NEDのデービッド・イグナシウス会長代理は1991年のインタビューで語っている。「当時と今の最大の違いは、大っぴらに活動しているので、後で批判される可能性が少ないということ。オープンであることは即ち、自己防衛だ」
NEDは設立以来、民間NGOの扱いだが、実際には活動資金の大半を米議会から受け取っている。NEDのホームページによれば、年間の資金提供は1200件、1件当たりの平均は5万ドルだ。
NEDは1980年代に共産主義政権の終焉に貢献したとして、その功績が認められてきた。特に1989年に民主化したポーランドへの支援では力があったとされる。
一方、アメリカ政府の手先として非難を浴びることも依然、多い。
2002年には、ベネズエラで民主的に選ばれたウゴ・チャベス大統領の政権転覆を図った反政府団体に資金提供を行ったと批判された。
2005年にジョージ・W・ブッシュ元米大統領がNEDの予算倍増を要求した時には、米共和党のロン・ポール下院議員(テキサス州選出)はこう批判した。「NEDはアメリカの意向に沿う海外の政党や運動に米国民の税金を垂れ流すことで、民主主義を転覆している団体だ」
(翻訳:河原里香)
カルロス・バレステロス
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