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香港民主化を率いる若きリーダーの終わりなき闘い

ニューズウィーク日本版 / 2018年3月10日 15時30分

2月6日の終審法院の判断については手放しで喜んではいない。むしろ、市民的自由と香港の司法の独立にどう影響するかが気になるという。

終審法院は黄と羅冠聡(ネイサン・ロー、24)および周永康(アレックス・チョウ、27)の「非合法集会」罪をめぐる2審判決を破棄したが、この判断はいわば当局からの最終警告に等しかった。馬道立(ジェフリー・マー)首席法官は「無秩序や暴力の要素は抑止すべき」であり、今後の抗議や不服従にはより重い「実刑を科す」とクギを刺した。

「現状を楽観してはいない」と、黄は言う。「終審法院の判断は抗議デモ参加者に対し、厳格な基準の適用を示した。今回の終審法院の判断を『一見甘い』と表現したのは、これで今後自由選挙を求めて闘うことが今まで以上に困難になったからだ」

黄は14年の雨傘革命の際に裁判所からの撤収命令に逆らった罪でも禁錮3カ月の判決を受け、やはり上訴している。



香港は面積こそ小さいが、中国の金融システムと外国との重要な架け橋として、中国への投資促進に極めて重要な役割を果たしている。中国企業は香港証券取引所に進出しており、16年には香港のIPO(新規株式公開)の約90%を中国本土の企業が占めた。

だが中国は直接投資のかなりの部分を香港に頼る一方、香港の歴史的な自由(およびそれが本土にとって前例となること)をよく思ってはいない。

今年1月、香港選挙管理委員会は3月に行われる香港立法会(議会)の補欠選挙にデモシストの常務委員である周庭(アグネス・チョウ)が出馬することを認めなかった。デモシストが主張する「民主自決」が香港基本法(憲法に相当)に抵触するというのが、当局の言い分だ。

「政治的なレッドラインにぶつかったが、われわれは引き下がらない。政府は私たちが選挙に出馬するのを禁じているようだが、私たちは民主主義のため闘う力を失ってはいない」と、黄は強気だ。

黄は敬虔なキリスト教徒の家庭で育った。政治的な活動に引かれたのは、多感な年頃に貧しい家庭を訪れ、祈るだけでは彼らを救うのに必要な変化は起こせないと気付いたのがきっかけだった。11年に14歳で学生運動グループ「学民思潮(スカラリズム)」を結成。

その1年後には10万人を超える政治集会を組織して、批判派が北京寄りの「洗脳」だと酷評する愛国教育に抗議した。結局、香港政府は愛国教育の導入を事実上撤回せざるを得なくなった。

現在はデモシストの活動に専念するため大学を休学し、選挙戦の準備に励んでいる。共に雨傘革命を率いた羅は昨年立法会選挙で当選したが、就任宣誓で抗議演説を行って失格となった。香港市民に仕えるという宣誓文の前に前置きをし、宣誓では「中華人民共和国」の「共和国」の部分に疑問を投げ掛けるかのように発音した。

「3月11日に補欠選がある。(デモシストは)ベテランの幹部活動家を1人出馬させるつもりだ。羅の分の議席を取り戻したい」と、黄は意気込む。

すぐに何かを変えられるとは思っていない。「10年後も同じ戦場にいるはずだ」と、黄は言う。「ただ香港といえばブルース・リーやジャッキー・チェンや飲茶というイメージじゃなく、人々が民主化を求めて闘っている国だと思われるようになればいいと思う」

<本誌2018年3月13日号掲載>

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クリスティーナ・チャオ


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