北朝鮮の姿勢軟化は制裁の成果か、時間稼ぎか
ニューズウィーク日本版 / 2018年3月16日 15時30分
マイク・ペンス米副大統領は2月に訪問先の韓国で、北朝鮮が核・弾道ミサイル開発を諦めるまで圧力をかけ続けると述べている。対して北朝鮮は、非核化は外交交渉の前提ではなく、交渉の結果としてもたらされると言いたいらしい。
ペンスは6日の声明でも、北朝鮮が核開発計画を後退させるまで譲歩しないと繰り返した。いわく、「アメリカと同盟国は金体制が核開発計画を終わらせるまで最大の圧力をかけ続ける。あらゆる選択肢が検討の俎上にあり、それは非核化に向けた確実かつ検証可能で具体的な道筋を見届けるまで変わらない」。
核放棄の問題だけが唯一の障害ではない。5日に行われた韓国特使団との夕食会で、金は53年の休戦以来、南北に分断されたままの朝鮮半島の統一という「新しい歴史」についても口にしたとされる。
もちろん、それは韓国とアメリカが長年にわたって追求している民主的な統一ではあるまい。ランド研究所のベネットに言わせれば、「金は韓国主導の統一に言及していない。あくまでも自分が主導する気だ」。
金体制存続の保障があれば核兵器保有の必要はないと北朝鮮は言い、対話への扉を開いたかにみえる。しかし問題は、北朝鮮の考える「保障」の中身だ。彼らはアメリカが敵視政策をやめ、経済制裁を解除し、合同軍事演習をやめ、さらには何十年も前から韓国に駐留している米軍の撤退も要求してくると思われるからだ。
なにしろ北朝鮮は長年にわたり、リビアの例を持ち出してきた。指導者のカダフィ大佐は03年に大量破壊兵器計画を放棄したが、約10年後にアメリカの陰謀で体制を覆された。そう信じているから、自分たちの考える形の統一でなければ体制は保障されないと考えるだろう――ベネットはそう語る。
民間の船舶を利用した制裁逃れを防ぐ努力など、アメリカの制裁は厳しさを増している。北朝鮮の対話提案には、制裁緩和への期待も含まれているだろう。米議会筋も、最近の北朝鮮による「ほほ笑み外交」は、輸出による外貨獲得をほとんど不可能にする制裁をなんとか緩和してほしいからだとみている。
もちろんトランプ政権は北朝鮮への「最大の圧力」を続ける決意で、制裁緩和を持ち出すことはない。しかし北朝鮮の対話姿勢によって、アメリカが他国を、とりわけ中国を説得して追加制裁を打ち出すのが難しくなったのは事実だ。
現に中国は、アメリカが国連安保理に要求した33隻の北朝鮮船舶の制裁追加案に異議を唱えている。金正恩がアメリカとの対話に前向きな姿勢を見せている現在、中国が今までのような圧力を加え続ける保証もない。
タウンは言う。「そもそも、先に対話を望むと言ったのはトランプ政権の側だ。もしもこのチャンスを逃したら、追加の経済制裁をしたくても国際社会の同意は得られないだろう」
<本誌2018年3月20日号[最新号]掲載>
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キース・ジョンソン、ダン・デ・ルース
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