サウジ「改革派」皇太子に期待し過ぎるな
ニューズウィーク日本版 / 2018年3月20日 15時0分
それでも、ムハンマドのような人物の登場に内外からの期待を感じずにいられない。隣国イエメンの内戦への介入は泥沼化を招いているが、自国では新しい社会契約を築こうとしている。サウジアラビアを「投資のハブ」にして、女性に自動車の運転を認め、若者に機会を与える。これらの改革は、サウジアラビアが崩壊するか、崩壊する危機よりはるかに好ましい。
しかし、欧米がムハンマドを歓迎する本当の理由は、彼がイスラム教を「正す」と改革を約束していることだ。同じ目標を掲げるシシよりも、メッカとメディナという「二聖モスクの守護者」であるサウジ国王の後継者ムハンマドのほうが言動に重みはある。
イスラム教の中でも厳格な復古主義を掲げるサウジアラビアのワッハーブ派はかつては寛容で穏やかだったが、イラン革命の恐怖から妥協と寛容さを失った――。ムハンマドが語るこの「物語」は歴史的な記録とは異なるが、彼と対話をした欧米の人々が至る所で繰り返している。
とはいえ、サウジアラビアの人々や欧米の支配層がムハンマドに熱い視線を送るのは筋違いだろう。彼が改革を実行する基本的な手法は、権力をできる限りかき集めることだ。
ムハンマドが改革を達成できず、国民に約束している生活と現実の差が明らかになって、抗議の声が広がったときに、代償を払うのは彼を支持している人々だ。
失敗するとは限らないが、強権的な支配者が民主的な改革に成功するとしたら、予想外であり皮肉な結果だ。
From Foreign Policy Magazine
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[2018.3.20号掲載]
スティーブン・クック(米外交評議会上級研究員)
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