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政府と人民を飲み込む党――全人代第五報

ニューズウィーク日本版 / 2018年3月22日 16時0分

これは毛沢東の個人崇拝がもたらした恐るべき災害を何としても阻止しようという精神に基づいたものである。



その精神を完全に覆して、すべてを「党」が掌握し管轄するという方向に改編されたのが、今般の国務院機構改革である。

これまで国務院の下に置かれていた「~小組」といった複数の行政省庁にまたがるシンクタンク的組織を、すべて「~委員会」に改称して、党組織の直轄下に置く。

たとえば中央外事工作指導小組などは中央外事工作委員会に編成されて党の直轄下に置き、外事の中に中央海洋権益保護工作小組の包含することになる。(その他数多くの編成替えがあるが、他のメディアでも報道されているので、文字数の関係上、省略する。)

また党員以外の公務員に対しても中共中央組織部が人事権を握ることになる。

そうでなくとも、誰もが習近平の方向を向いて仕事をしていかなければならない時代に入ったというのに、公務員の人事権まで一括されたのでは、独裁の弊害を唱えることなど遠のくばかりで、やがて毛沢東時代の独裁の弊害が沈殿し爆発するだろうことは目に見えている。

メディアも一括統治

中共中央は「党と国家機構改革を深化させる方案」なるものを発布したが、その中にメディアに関する一括統治の方案が含まれている。新華網が掲載したが、あまりに転載が多くなってしまい、なかなか最初のリークが見つからないので、新浪のサイトでご覧いただきたい。

この赤い色の図表にあるように、中央テレビ局(中央電視台)CCTVと、中央人民放送局(中央人民広播電台)CNR、および中国国際広播電台(中国国際放送局)CRIを吸収(撤廃)統合して「中央放送テレビ総局(中央広播電視総台)」を創設し、すべてを中共中央宣伝部が統括する。中国の国内的には元の呼称を使用し、対外的には「中国の声」という統一呼称を用いることになる。

中共中央政治局委員にも疑心暗鬼

中共中央政治局委員は、初めて党中央と習近平に職務報告を書面で行なうことが決まった。新華網が伝えた。

新華社電によれば、「中共中央政治局に対する党中央集中統一指導を強化することに関する若干の規定」に基づき、中共中央政治局委員は毎年の活動報告を習近平に対して提出し、その審査を受けることとなった。中国共産党が建党されたときの「初心を忘れてはならない」として、腐敗の再発や不正を防止するのが目的だ。それほどに腐敗は撲滅するのが困難だということの何よりの証しでもある。もちろん習近平に反旗を翻す者が出てくることを未然に防ぐことも目的の一つだろうが、「恐怖と威嚇」によってしか、実は党内も統率できないことが、このことから逆に読み取ることができよう。

権力闘争という視点で中国を分析すると、習近平政権を読み間違えるだけでなく、日本にはいかなる国益ももたらさないことを肝に銘じておきたい。


[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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