ポーランドでまた歴史否定発言「ユダヤ人は自らゲットーに行った」

ニューズウィーク日本版 / 2018年3月22日 18時0分

<ホロコーストに加担していない、というウソを法律にしたポーランドで、ますます脱線する歴史認識>

ホロコースト(ナチスのユダヤ人大虐殺)の最中、ポーランドのユダヤ人は強制収容されたのではなく、自ら進んでゲットーで暮らす道を選んだ。ポーランド人の隣人にうんざりしていたからだ──ポーランドの元政治家で現首相の父親がインタビューでそう語った。

「ユダヤ人をワルシャワ・ゲットーに追い込んだのは誰か知っているか? ドイツ人だと思うだろう。違う。ユダヤ人が自主的に行ったんだ。そこは別天地で、厄介なポーランド人と付き合わなくて済むと聞かされたからだ」

ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相の父親で、元上院議員のコルネル・モラウィエツキはポーランドのオンライン誌Kultura Liberalnaにそう語った。

ポーランドでは今年2月、ホロコーストにポーランド人が加担したという表現を禁止する法案が成立。モラウィエツキ政権は今、この新法をめぐり国際社会の激しい批判を浴びている。

批判には倍返し

第2次大戦中にポーランドではユダヤ人300万人が虐殺されたが、モラウィエツキ政権は自国には何の罪もないと主張。新法の下では、ポーランドにも責任があると言えば3年以下の懲役か罰金刑を科される。この法律の適用を除外されるのは科学的な調査と芸術作品だけだ。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「歴史を書き換える試み」だとして猛反発。国際社会からも言論の自由を弾圧する悪法だと批判の声が上がっている。

モラウィエツキは法案成立後、「ホロコーストに協力したユダヤ人もいた」と述べ、イスラエルとの関係はさらに悪化した。

モラウィエツキ政権は、この法律が批判されるたび2倍にして反論し、さらに激しい批判を浴びた。モラウィエツキ首相は先日、フォーリン・ポリシーに論説を寄稿、この法律に対する国際社会の批判は誤解によるものだと主張した。



ユダヤ人も加担と強弁

「ポーランドがホロコーストに共謀したというげんせつ主張は、ナチス・ドイツの責任を曖昧にする」と、モラウィエツキ首相は書く。

「第2次大戦中、ポーランドはドイツとソビエトが企んだ大虐殺を経験し、600万人のポーランド人が亡くなった。その半数がポーランド在住のユダヤ人だ。ポーランドにナチスの第三帝国に協力する政権が誕生したことは一度もなく、ナチスの親衛隊が結成されたこともない」

元政治家である首相の父親は、息子の主張を後押しするためにインタビューに応じたようだ。

とりわけユダヤ人もナチスに協力していたというモラウィエツキ首相の発言は、激しい非難を浴びている。これを援護するためか、マテウス・モラウィエツキはインタビューで「ユダヤ人自由防衛隊」と呼ばれるネットワークに言及した。ナチスが抵抗組織に潜入させたユダヤ人スパイ網のことだ。

ユダヤ人は自主的にゲットーに行った、という主張の是非をめぐる議論が大々的に展開されていること自体が、新法の抑圧的な効果を浮き彫りにしているという見方もある。

ポーランドでは右派政党「法と正義」が政権を握って以来、ナショナリズムが一気に高まり、極右勢力が台頭している。昨年11月の独立記念日には、首都ワルシャワで愛国主義団体がデモを実施し、60万人が参加。ネオナチも堂々と隊列に加わった。


クリスティナ・マザ

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