透けて見える金正恩氏の「ホンネ」──北朝鮮の論調に微妙な変化
ニューズウィーク日本版 / 2018年3月26日 14時11分
筆者は、必ずしも制裁だけで北朝鮮が姿勢を変えたとは思わないが、あえて言及するということは、決定的ではないにしろ制裁がボディブローのように効いているのかもしれない。もしくは「制裁はやめてほしい」という隠れたメッセージかもしれない。
制裁問題に加え、北朝鮮が抱えるアキレス腱は「人権問題」だ。米トランプ政権は米朝首脳会談の話が電撃的に浮上する直前、大統領と副大統領が相次いで脱北者と面談するなどして、北朝鮮圧迫のための「人権シフト」に動いていた。たとえばトランプ氏は、中朝国境での北朝鮮女性の人身売買を「やめさせる」とまで言っている。
(参考記事: 中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち)
金正恩氏には、核問題を中心に対話を進めながら、人権問題に関する議論は避けつつ、なんとか制裁解除を勝ち取る思惑があるのかもしれない。
さて、ここで不透明なのが米国の姿勢だ。トランプ氏が金正恩氏と会談する意向を示した直後、対話重視の穏健派と見られていたティラーソン国務長官が解任され、後任に対北朝鮮強硬派として知られるマイク・ポンペオCIA長官が任命された。
また、次期米大統領補佐官(国家安全保障担当)にボルトン元国連大使が指名された。ボルトン氏は、ネオコン(新保守主義派)を代表するメンバーの一人で、対北朝鮮強硬派だ。
トランプ氏が米朝首脳会談を行うとした5月まで、残り時間は少ない。表に出てくる情報が少ない中、米朝は熾烈な神経戦を展開しているのかもしれない。
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。
※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載
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