アメリカの「裏方」をアピールする南北朝鮮の本心は?

ニューズウィーク日本版 / 2018年4月26日 16時0分

<トランプに花を持たせようと躍起になる文在寅と金正恩が描く統一へのシナリオ>

4月27日、韓国と北朝鮮は史上3度目の南北首脳会談を開く。過去2回と異なるのは、今回はメインイベントである米朝首脳会談の事前会談という位置付けであること。つまり前座だ。

これは文在寅(ムン・ジェイン)政権も認識している。韓国大統領府は米朝会談に向け「南北会談でしっかり地ならし」すると裏方ぶりをアピール。韓国メディアも南北会談を米朝会談への「仲介」と表現している。

北朝鮮問題の最終章が米朝の雪解けであることを考えれば、韓国が脇役に回るのは自然だ。しかし文の手法を見ると、米朝会談こそ脇役であり、南北朝鮮がそれを踏み台にして主役にのし上がる裏のシナリオを描いているように見える。

米朝会談を控えて世界の関心が北朝鮮の非核化に集まるなか、文が本当に狙っているのは何か。それは、非核化の先にある南北統一だろう。それこそが最大の関心事と思わせる行動が、南北両政権には見え隠れする。

文にとって南北統一は付け焼き刃の政策ではない。07年の第2回南北首脳会談で締結された10.4宣言の冒頭には「民族同士の精神にのっとり、統一問題を自主的に解決していく」とある。当時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権でこの宣言作りを主導したのが盧の秘書だった文だ。文はこの時、南北会談推進委員長も務めていた。

南北統一実現のためには、朝鮮半島問題に強く干渉するアメリカの影響力を排除することが不可欠。そこで南北は手始めに、米朝会談の成果をトランプ米政権の手柄にしようと躍起だ。

南北会談を8日後に控えた4月19日、文は「終戦」や「平和協定」を議論すると発表。さらに金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を代弁して「北朝鮮は在韓米軍の撤退を求めない」と、従来の非核化の前提条件をひっくり返してみせた。「平和協定」「非核化」が米朝会談で実際に発表されれば、トランプ政権は歴史に名を残すだろう。

南北双方が「時間稼ぎ」

北朝鮮は4月20日、北部の核実験場の廃棄と核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の中止を決めた。ただし、「平和協定」「非核化」の文言が米朝会談で発表されたとしても、現実の非核化や和平の実現には相当な時間がかかるという見方が大勢だ。それでも、初の米朝会談実現とその成功に浮かれたトランプが朝鮮半島から気をそらしてあれこれ言わなくなれば、南北は自らの統一へ向けたシナリオを進めやすくなる。



非核化に時間がかかるとなれば、国連の制裁解除も段階的なものになる。となれば、北は韓国に援助を求めるだろう。韓国は国連の制裁とは別に独自の制裁を北朝鮮に科している。なかでも制裁前の水準のコメ支援が再開されれば、平壌首都圏の軍や党幹部の胃袋を安定的に満たすことができるとみられている。

一方、韓国にとっても制裁で禁じている開城工業団地の操業が再開すれば、統一に向けた国内の不安を緩和できる。韓国の若者世代では統一した際の韓国の経済負担を嫌う声が強いが、北朝鮮経済に自力を付ける機会を与えればこうした不満を緩和できる。

北朝鮮の態度の軟化は金の時間稼ぎだとする指摘は多いが、時間が欲しいのは文も同じだ。その間に南北間の経済活動が活発になれば、統一の青写真は単なる青写真でなくなる。

トランプを目先の栄誉に浴させておけば統一戦略で主導権を握れる――。南北が目指すのは、「脇役」の下剋上かもしれない。

<本誌2018年5月1&8日号掲載>

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前川祐補(本誌記者)

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