1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

北朝鮮の平和攻勢、日本は外交孤立に陥るのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2018年5月2日 14時30分

手は打たれており、周囲の反応もあるという現状を踏まえて、実際に拉致問題そのものを前進させるにはどうしたら良いのでしょうか。被害者の親御さん達が高齢化する中で、これが最後のチャンスだという切羽詰まった声もあります。安倍政権の側で日朝交渉の可能性も模索されるなかで、何か打つ手はあるのでしょうか?



3つ考えてみたいと思います。

1つは、現在の北朝鮮の指導者世代は、拉致問題の当事者世代ではないということを認めることです。拉致という犯罪の深刻さを考えると、被害者を返してこない現在の指導層の世代も同罪に思われる、これは自然なことです。ですが、そこにこだわっては、それこそ北朝鮮が平和攻勢を仕掛けてきている現在の流れから孤立してしまいます。

2014年のストックホルム合意で「特別調査委員会」を設けておきながら、2016年には一方的に調査を中止したことで、現在の指導層世代への不信感があるのはよく分かります。ですが、反対にこの調査打ち切りという問題は、むしろ核問題をめぐる外交戦の中で起きたことだとすれば、先方も「調査委員会打切り」という事件を「水に流せる」可能性も出てくると思います。

2つ目は、南北合意で出てきた「離散家族の再会」、あるいは金正恩が口にしたという「故郷を失った人々へ希望を与える」というコメント、その対象に拉致被害者が入るという認識を確立することです。もちろん、拉致被害者は犯罪被害者ですから、原状回復は最優先で行われるべきです。ですから、こうした扱いはある種の譲歩になるわけですが、それでも「家族再会」という大きな枠の中で、解放なり再会が実現できればという判断はあると思います。

その場合は、以前から家族会の飯塚繁雄氏が取り組んでいたように、韓国の拉致被害者家族会との連携や離散家族問題の団体などと協調するのも効果的ではないでしょうか。

3つ目は、被害者本人の不安感を取り除く措置をしておくということです。例えば、現在までに、拉致の目的は「工作員に日本語を教えて偽の日本人を養成する」ためであったという可能性が濃厚とされています。ということは、拉致被害者は脅迫を受けながらではあっても、犯罪行為の幇助をさせられていたかもしれません。そうした場合、北朝鮮国外で、つまり日本と韓国で訴追されることはないという保証を事前に明確にしておくということは、北朝鮮政府にしても、拉致被害者にしても出国へのハードルを下げる効果があると思います。必要に応じて、韓国側との調整が必要ですが、それは可能ではないかと思います。

また、仮に日本人同士ではない、つまり拉致被害者と北朝鮮の住民の間に生まれた子供を伴って帰国する場合にも、日本国籍を保証し、同時にヘイトなどの差別から守るという保証をするのも必要でしょう。

いずれにしても、今回の米朝首脳会談へ向けて、拉致問題に関しても具体的な成果が得られるよう、実務的な調整が必要だと思います。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きをウイークデーの朝にお届けします。ご登録(無料)はこちらから=>>

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください