イランが核保有に要する時間はどのくらいか
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月10日 17時0分
<アメリカの身勝手な核合意離脱で、イランが核武装に突き進むリスクは高まった?>
長年にわたる外交努力と粘り強い交渉の末に成立した2015年の核合意で、イランは制裁解除と引き換えに、核兵器開発につながる恐れのある核開発計画を中止した。この合意にはアメリカ、イギリス、ロシア、フランス、中国、ドイツが調印。国連安全保障理事会も正式に承認しており、アメリカの離脱は国際法違反である。
この核合意によって、それ以前の経済制裁できなかったことが実現した。イランは核兵器の製造に必要な原料の大半を諦めなければならなくなったのだ。
今のところアメリカ以外の当事国はイランも含めて合意を維持すると言っているが、もし合意が無効になれば、イランは1年後までには核爆弾を1発を作ることができるという。
「合意が崩壊したその日から、イランが兵器級の核爆弾1発分の高濃縮ウランを製造するには最速で12カ月だ。フル稼動すれば、ちょうど1年で最初の1発分の原料が手に入る」と、米シンクタンク・大西洋協議会の核不拡散専門家マシュー・クローニグは本誌に語った。
核兵器の主要な原料は、プルトニウムと高濃縮ウランだ。核合意(正式名称は包括的共同作業計画:JCPOA)では、イランは高濃縮ウランの備蓄を約98%減らし、核兵器に使用できる濃縮度のウランを15年間生産できないことになった(原子力発電用のウランは濃縮度3%程度で十分だが、核兵器の製造には純度90%まで濃縮する必要がある)。
ウラン濃縮はすぐ再開できる
合意成立以前、イランは2カ所の核施設にウラン濃縮用の遠心分離機2万台を所有していた。合意ではそのうち1カ所の施設で4%未満までの濃縮をすることしか認められておらず、現在は何千台もの遠心分離機が稼動を停止しているが、クローニグによると、フル稼動態勢に戻るにはさして時間はかからない。
「施設は2カ所とも閉鎖を免れ、1カ所では今もウランを濃縮している。運転を停止した遠心分離機約1万3000台も解体されておらず、新型の遠心分離機の開発は続行できることになっている。濃縮作業はいつでも再開できる」
核合意の縛りがなくなれば、イランはすぐにでも新型の遠心分離機のテストに乗り出すはずだと、内部関係者は言う。
「合意が崩壊すれば、20%レベルの濃縮を再開するだろう。新たに開発された遠心分離機IR-6なら、はるかに速くそのレベルまで濃縮できる」と、中東地域の研究開発計画を支援するドイツの研究機関CARPOのアドナン・タバタバイCEOは本誌に語った。「核合意の下でも、IR-6の研究開発は認められているが、試運転はできない。イラン高官の話では、IR-6なら4日間で20%レベルにできるという」
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