アメフト悪質タックル事件を、アメリカから考えると - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月17日 16時20分
どうして処分が甘かったのかというと、意図的な悪質タックルなどの行為は、規則によって厳格に摘発されるべきで、審判が発見できなかった違反行為に関しては厳しく処罰できないという考えがベースにあったからです。そこで、問題視されたのは、「闇のボーナス」制度でした。つまり「ラフなプレー」をしたり、「相手の選手を負傷させ」たりした場合にチームが裏金からボーナスを出していた点が問題視されたのです。
もちろん、相手にケガをさせるという指示が出ていたのは倫理的には許されることではありませんが、とにかく審判が現場で摘発できないプレーを、後から倫理的に問題だからという形で処分するのは難しいのです。そこで、連盟として厳格にやっている「給与総額の管理」に違反して、裏金からボーナスを払ったのは規約違反だとして、これを問題視したのでした。もう一つの問題となった「脳しんとう」の原因となる危険行為については、厳格に調査がされました。
しかし、それ以外はプレーの範囲ということになり、かなり甘い処分になったのです。その理由の一つは、この「闇のボーナス」を運用していた期間について調べてみると、セインツの対戦相手のデータを分析してみても「特に負傷率がアップしたわけではない」という結果になったからとも言われています。
要するにチームの指示があり、ボーナスをエサとしてつられていても、実際のプレーの中で選手たちは、自分たちが懲罰を受けるような汚いプレーはできなかったし、ある一線を越えて仕掛けることはなかったのだと思われます。
この「ある一線」ということについて言えば、それは現場の選手は長年のプレーを通じてよく知っているはずです。それは、アメリカのプロも、日本の大学チームも大きくは変わらないと思います。その一線が簡単に越えられてしまったことの背景には、やはり組織の問題があったと考えざるを得ません。
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きをウイークデーの朝にお届けします。ご登録(無料)はこちらから=>>
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
足裏で過剰な力でタックルした行為は「著しい反則行為」…東京V山田楓喜に2試合出場停止&罰金20万円
ゲキサカ / 2024年7月8日 20時33分
-
審判批判は罰金が必要? 日本では否定的…レフェリーの環境改善が鍵【コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年7月7日 16時50分
-
メッシ、コパ・アメリカで“足裏&カニ挟みタックル被害”に反響「怪我しないの奇跡」「危険すぎる」
FOOTBALL ZONE / 2024年6月22日 8時10分
-
J1町田・黒田剛監督「われわれが正義」発言の波紋 〝悪役〟レッテルの筑波大は反論
東スポWEB / 2024年6月20日 5時12分
-
ドイツ戦で一発退場のスコットランド代表DFに2試合の出場停止…ギュンドアンに両足タックル
超ワールドサッカー / 2024年6月18日 5時30分
ランキング
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)