「セクシー過ぎる」のが悪い?──セクハラ被害で米マクドナルドを提訴
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月23日 18時47分
<全米のマクドナルドに勤める女性従業員10人がセクハラで会社を提訴。2年前にも別の女性たちがセクハラ被害を訴えたが、今日まで放置されているという>
ファストフード大手のマクドナルドで働く女性たちが声をあげた。#MeToo運動を受けて1月に発足した「タイムズアップ・セクハラ被害者支援基金」の後押しを受け、少なくとも10名の女性従業員が職場でのセクハラを訴えた。
15歳の少女を含む女性従業員は、体をまさぐられたり、わいせつ物を見せられたり、みだらな言葉を浴びせられたり性的な誘いを受けたと主張する。勤務地は、シカゴ、デトロイト、ニューオーリンズ、ロサンゼルス、マイアミ、オーランドなど、9つの都市にまたがっている。
セクハラ訴訟を提起しようとしたら報復されたと言う従業員もいる。嘲笑された、単に無視された、と訴えるケースもある。
女性たちの訴えは、低賃金労働者の賃上げを目指す市民団体「ファイト・フォー・15ドル(時給15ドルのための戦い)」を通じて、米雇用機会均等委員会(EEOC)に提出された。
今回の訴訟費用を負担するタイムズアップは、全米女性法律センターが設立したもので、ニコール・キッドマン、ケリー・ワシントン、エマ・ワトソンなどの有名人も支持している。
無駄だった上司への訴え
ファイト・フォー・15ドル主催の電話会見で、セントルイスのマクドナルドで働く15歳のブロウナ・モローは、執拗にわいせつな言葉をかけてくる同僚のことを上司に訴えたが、何もしてくれなかったと語った。
「私の身体のことや、彼が私にしたいと思っていることについて、ものすごく不快なことを言われた」と、モローは語った。「あまりにもどぎつくて、口に出すのも恥ずかしい」
「上司に話してもまじめに受け取ってくれず、『訴えても絶対勝てないよ』と言われた」
ニューオーリンズの店舗に勤めるタニヤ・ハレルは仕事中に同僚に身体を触られたが、上司はとりあってくれなかったと言う。「君がセクシー過ぎるんだろう、と言う上司もいた」
こうした上司たちの反応にハレルは無力感と恐怖を感じ、何も言えなくなった。別の同僚がトイレで彼女を壁に押し付け、「性器を出して性交を迫った」時も、誰にも報告できなかったという
マクドナルドの年次株主総会は5月17日にイリノイ州で開かれたが、セクハラ訴訟の訴状はその数日前に提出された。
マクドナルドはその2年前、ファイト・フォー・15ドルを通じて女性従業員が訴えた数々のセクハラ疑惑について調査すると約束していた。「今日まで約束は果たされていない」と、同団体はツイートした。
「#MeToo運動は、ハリウッドの女優たちには変化をもたらしたかもしれない。でも今回の告発で、セクハラがマクドナルドのメニューからまだ消えていないことがはっきりした」と、シカゴのマクドナルドの従業員で、ファイト・フォー・15ドルのメンバーでもあるアドリアナ・アルバレスは述べている。
マクドナルドの広報担当者テリ・ヒッキーは本誌の取材に対し、「セクハラの申し立ては真剣に受け止めている」と応じた。「わが社の職場では、ハラスメントも差別も存在の余地はない」と、ヒッキーは付け加えた。
ファイト・フォー・15ドルによれば、今回訴訟を起こされている店舗は、マクドナルドの直営店ではなくフランチャイズ加盟店。マクドナルド側は、加盟店は同社から独立して運営されているので関係ないと主張しており、マクドナルド本体に責任を認めさせるのは厄介なプロセスになりそうだ。
(翻訳:栗原紀子)
シャンタル・ダシルバ
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