米朝会談キャンセルで、得をしたのは中国を味方に付けた北朝鮮
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月25日 15時10分
そもそも、「完全非核化」の意思はない北朝鮮と、「完全非核化」を交渉の条件にしながら強固な戦略が存在しないアメリカとは、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」だろうが何だろうが、非核化で合意に至る可能性は低いと見られていた。非核化に向けた両者の立場に、あまりにも大きな隔たりがあるからだ。
しかも本来なら首脳会談というのは、首脳同士が会うまでに事前の外交的な協議とすり合わせなどが何カ月も行われるものだが、今回はそれも不十分で、交渉の出口が見えていないと言われていた。そしてトランプが、この期に及んで「完全非核化」が無理だと理解したことが、今回のキャンセルにつながったと言える。
一連の動きから最も打撃を受けたのはおそらく韓国だろう。大々的に芝居掛かった南北会談を開催し、直前の米韓首脳会談の際にも韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)安全保障室長は「99.9%」の可能性で米朝会談は行われると自信を持って述べていた。結果的に振り回されてしまっただけ、ということになりそうだ。
米朝関係は、再び目が離せない緊迫した情勢に逆戻りした。
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山田敏弘(ジャーナリスト)
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