トランプみごと!──金正恩がんじがらめ、習近平タジタジ
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月29日 18時0分
トランプは米高官を北朝鮮とシンガポールに派遣し、金正恩が身動き取れないようにがんじがらめにした。みごとなのは、そのついでに習近平に「出しゃばるな!」と釘を刺す結果を招いていることだ。この腕前を紐解く。
米高官を北朝鮮とシンガポールに派遣
トランプ大統領は27日、元駐韓国米大使で現在は駐フィリピン米大使を務めるソン・キム氏が率いる米国実務者代表団を北朝鮮に派遣した。ソン・キム氏は長年にわたり北朝鮮の核問題を担当してきた。同行者の中には、国家安全保障会議(NSC)のフッカー朝鮮部長のほかに、ランディ・シュライバー国防次官補らがいる。ランディ・シュラ-イバー次官補は、2016年9月20日に筆者をワシントンD.C.に招聘し、彼が主宰するProject2049で、筆者が書いた『毛沢東 日本軍と共謀した男』に関してスピーチをするように依頼してきた人物だ。あのランディがいま、板門店の北朝鮮側施設「統一郭」にいて北朝鮮の対米外交を担当する崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官らと、実務者レベルの話し合いをしている。話し合いは29日まで続くという。
同時にトランプ大統領はシンガポールにヘイギン米大統領次席補佐官ら一行を派遣し、北朝鮮との間で米朝首脳会談開催の調整に当たらせている。北朝鮮側からは金正恩委員長の執事(秘書室長格)とされているキム・チャンソン国務委員会部長が参加。彼は北京経由でシンガポール入りした。キム・チャンソン部長は5月24日に北京に到着し、26日に帰国した人物だ。その間に、トランプ大統領の米朝首脳会談中止宣言が出された。
金正恩、がんじがらめ
北朝鮮とシンガポールで米朝実務者レベルが会談するという状況にいきなり追い込まれた金正恩委員長としては、まさか習近平に助けを求めに行くことなどできやしないだろう。
おまけにトランプ大統領は27日にツイッターで「北朝鮮には素晴らしい潜在力があり、いつか偉大な経済・金融国家になるだろう。金委員長と私はこの点で認識が一致している」と書いている。「北朝鮮が核放棄に応じれば、北朝鮮がこれまでにない経済発展を遂げることができる」とも言い、金正恩委員長の心を刺激している。
思うに、もしかしたら金正恩委員長は「だとすれば、いっそのこと、アメリカ側に付いてしまった方が得かもしれない」と心ひそかに思っているのではないかと、思うのである。
もしも、このような計算が働いたとすれば、なおさら習近平国家主席などに会いに行ったりしている場合ではない。訪中を申請していたとしても、やんわりとキャンセルしただろう。
この記事に関連するニュース
-
討論会でトランプ氏「中朝首脳はバイデン恐れず」 バイデン氏「好きにすればいい」
産経ニュース / 2024年6月28日 12時3分
-
中国、露朝接近を静観 米国からの圧力増を警戒か
産経ニュース / 2024年6月19日 20時20分
-
プーチン氏の北朝鮮訪問は「悪の枢軸」結託の象徴 米外交の手詰まりを露呈
産経ニュース / 2024年6月19日 18時7分
-
「ロシアは得るもの多きナンバーワン国家」金正恩氏は後戻りしない露朝関係構築急ぐ
産経ニュース / 2024年6月18日 18時25分
-
北朝鮮の金正恩氏にはやはり息子がいないのか 韓国・文在寅前大統領の回顧録からみる家族構成
東洋経済オンライン / 2024年6月11日 13時0分
ランキング
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)