トランプ氏は北に譲歩したのか?
ニューズウィーク日本版 / 2018年6月4日 12時40分
肝心なところだけをざっくり訳せば「非核化の段階的プログラムにより、それに応じた見返りをアメリカや他の国々から得る」ということになる。しかし、よくよく見れば「Experts said」と冒頭にあり、「専門家の意見によれば」ということで、どなたかの個人的見解に過ぎないことが分かった。
情報があまりに多くて錯綜し、しかも時々刻々変化していくので、こういう混乱が起きるのもやむを得ないのかもしれない。筆者も同様なので、その状況は理解できる。
それでも客観的事実だけを、できるだけ正確に把握するなら、ホワイトハウスは結果的に「経済制裁は、北朝鮮の非核化作業が最終段階に近づくまで解除せず、初期段階や中間段階ではペーパーベースの政治的見返りに留める」という方針を崩していないようである。
北朝鮮はさらに追い込まれる
それどころか、「これはトランプ流の嫌がらせでしょう。金正恩への圧迫戦術です。複数回の会談は金正恩が耐えられないし、段階的と言ったところで、その間に何も得られないのですから、金正恩はさらに追い込まれるだけだと思います」と指摘するのは、関西大学の李英和(リ・ヨンファ)教授だ。
なぜ追い込まれるのか。理由は二つあるとのこと。
一つ目:北朝鮮の経済の疲弊が進み、制裁解除と支援獲得が急がれるから。
二つ目:軍部の不満。首脳会談を重ねても、もらえるのは朝鮮戦争の終戦協定に関するペーパーなどで、肝心の金銭は入って来ない。めぼしい大義と対価をなかなか得られないと、軍部が反発する。
筆者との個人的な学術交流の中で、李教授はさまざまな鋭い見解と北朝鮮内の速報を知らせてくれる。軍のトップ層に関しては事実、核廃棄に向けた強硬派を排除して穏健派に入れ替えるという人事がここのところ行なわれており、軍部の不満を金正恩が恐れている状況が表面化しているという。
そうだとすれば、金政権の体制を保証すると約束しているトランプ大統領としては、金体制の崩壊を招くであろうCVIDを避けて、そのために「段階的非核化」を受け入れたのではないだろうか。
李教授は2016年の時点で金正恩が「いずれ核を放棄し、対話路線に転換してくる」と予測しており、朝鮮半島問題に関しては群を抜いた第一級の研究者だ。
その彼が5月29日付のコラム「トランプみごと!――金正恩がんじがらめ、習近平タジタジ」を「まさに、その通りだ!金正恩はやがてアメリカにシフトしていく」と評価してくれたので、この線は不変のまま続いていくものと判断している。
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