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安倍政権は今こそトランプと距離を置く時ではないか - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2018年6月7日 17時15分

これに対して安倍総理は、G7並びにその直前の首脳会談で、トランプ大統領に対して、おそらく次の3点を持ち出すことと思います。

(1)北朝鮮との交渉においては、G7が結束する。
(2)その代わり、保護貿易、特に鉄鋼、アルミ、自動車の関税に関しては慎重になってもらう。
(3)北朝鮮に対しては、人道・人権問題の解決についても取り上げさせる。

つまり、(1)と引き換えに、米国に(2)と(3)の譲歩を迫るということです。(2)に関しては、カナダ、日本に加えて欧州諸国も同調するでしょうから、6対1という多数をもってアメリカに迫るという構図もあり得ます。

仮に、トランプ大統領が(2)には同意せず、また、今回の北朝鮮との交渉の結果として(3)について全く進展がなかったような場合には、日本の国際的な立場と国益には大きくマイナスとなります。



それだけではありません。アメリカが仮に北朝鮮に対して譲歩し、「核廃棄には時間的猶予」を与える一方で「短中距離ミサイルは残る」「当面核弾頭は残る」ような結果となり、さらに在韓米軍の削減など東アジアのパワーバランスへの変化が起きるようでは、日本の「安全の保障」にも大きな影響があります。

さらに、そのパワーバランスの変化に対して、トランプ政権から日本の「自主防衛」を迫られて国論分裂に追い込まれ、その上に巨額な兵器購入まで強いられるようでは、平和国家という日本の「国のかたち」までが揺らいでしまいます。

そのような危険性を考えると、安倍総理は今こそトランプ政権と距離を置くべきです。ゴルフ外交を積み重ねたからといって遠慮は必要ありません。フランスのマクロン大統領にしても、あれだけトランプ大統領と「抱擁を重ねた」にも関わらず、結果的に忠告は無視され、イラン核合意を「蹴っ飛ば」されているのです。この特異な大統領にとっては「首脳間の個人的信頼関係」の演出など、そもそもディールのテクニックのひとつに過ぎないのです。

2016年11月以来、安倍総理がトランプタワーを訪問したり、ゴルフ外交を重ねてきたりしたのは、トランプ政権の「保護主義」とか「同盟国の安全保障責任放棄」といった危険な匂いを感じて、その影響を最小限にしようと苦心してきたのだと思います。それはそれで外交当局も含めて正当な努力だと思います。

ですが、今回のG7とシンガポールの局面はそれとは別です。明らかに日本の国益が大きく損なわれるようであれば、ズルズルと引きずられるよりは、距離を置く必要も出てきます。その場合は、他のG5諸国との協調が重要になりますし、これに加えて日韓、日中との丁寧な対話を繰り返すことで、東アジア全体の安定を確保することが必要になってきます。


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