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集団セックス殺人の犯人にされた、アマンダ・ノックスの今とこれから

ニューズウィーク日本版 / 2018年6月20日 11時15分

事件のトラウマから逃れられたことは1日もない。「(当時)メレディスは21歳、ラファエルは23、私は20。みんなまだ子供だった」。同時に「人生を決定付けた瞬間だった。おかげで私は多くの知識と視点を得た」。



30歳の今も彼女はシアトルに住み、不当な告発の犠牲者のための活動に力を入れている。この場合の告発は、司法だけでなくメディアによる告発も含む。

メディアの執拗な報道には、取材対象のアイデンティティーを?奪する力がある。「私という人間は原形をとどめないほど誇張された。私がレイプゲームの元締めだったなんてバカげてる! 私は闇の女帝扱いされ、世界で最悪の性的倒錯者のように描かれた。そんな証拠は何もなかったのに」

ノックスが番組でインタビューした女性は全員、同じような経験をした。第1回のゲストは、モデルからフェミニズム活動家に転じたローズ。彼女は人気ラッパーのウィズ・カリファと離婚後、ミソジニー(女性蔑視)に基づく非難や中傷の嵐に何カ月もさらされた。

それでもローズは、「女性に不適切な期待を持つ男たちに愛情を込めて」語り掛け、教育することの大切さを説いた。「アンバーは温かくて穏やかで、母親のような存在感があった」と、ノックスは言う。

ノックスは今もミソジニーに平静ではいられない。「他の女性(が言葉の虐待を受けているの)を見ると、ついカッとなる。性的な侮蔑や攻撃を受けたときの気持ちが分かるから」

ノックスが番組のアイデアを思い付いたのは「#MeToo」運動が始まるずっと前。当時は話を聞いてもらうのに苦労した。「冤罪被害者の誰もが直面する壁を私も感じた。虚偽の自白を強制されるのがどういうものか、耐え難いほどの努力を払って説明しなくてはならなかった」

相談した相手はほとんどが男性だった。「なぜ重要な問題なのか、彼らは理解できなかったか、理解しようとしなかった」

だが昨年10月、大物映画プロデューサーのハービー・ワインスティーンをはじめとする権力者の男性によるセクハラが告発され始めると、全てが変わった。突然「女性たちの経験が大切なものとして扱われるようになった。驚きだったし、とても感謝している。ここまで来られるなんて思わなかったから」

彼女の言う「ここまで」は、女性に対する扱いだけでなく、本人の立場の変化も指している。「私は少し前まで、人生で一番大切な数十年を刑務所で過ごすのだと思っていた。やってもいない罪のせいでね」と、ノックスは言う。「あれから10年もたたないうちに、ここまで来られるなんて信じられない」


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[2018.6.12号掲載]
マリア・ブルタジオ


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