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今度は移民を直ちに国外退去、トランプ政権の憲法観に猛反発 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2018年6月26日 18時50分



ブッシュ政権は、そのようなロジックでテロ容疑者を拘束したり、あるいは一般の刑事法廷ではなく軍事法廷で裁いたりしました。ただ、当時のゴンザレス司法長官などは、「米国領土内では合衆国憲法の効力が及ぶ」つまり「被疑者の基本的人権が保障される」ので、「そうではない」場所を探したのでした。

そこで浮上したのが、グアンタナモ基地です。この基地のあるグアンタナモ湾というのは、キューバにあります。1898年に起きた米西戦争でアメリカがスペインに勝利したことで、キューバはスペインの植民地から独立を果たしたのですが、その見返りにアメリカはこのグアンタナモ湾を永久に租借する権利を獲得しました。

キューバ革命の結果1959年に成立したカストロ政権は、この租借には反対していましたが、事実上ずっとアメリカがこの湾を支配して、そこに軍事基地を設けているのです。ですから、厳密に言うと領土としては「キューバ領」であり、そこをアメリカが「借りているだけ」ということなので、合衆国憲法の基本的人権を認めなくてもいい、そのような解釈がされたのでした。

一方で、今回はホンジュラスやニカラグアで困窮したり、迫害を受けたりした難民を、一旦合衆国領土に入ったところで「不法入国だ」と宣言し、直ちに「国外退去」つまり「問答無用の追い返し」をすることになります。ということは、ブッシュ政権が避けようとした「米国領土内での基本的人権の否定」を堂々とやろうと言うことになるわけです。ですから、この案に関して反対派は猛反発しています。

こうした国の根幹に関わる憲法観の部分でも、トランプ支持者と反対派の間には、「ともに天を戴かず」とでも言うような激しい対立があります。こうしたなかでトランプ政権の関係者が、ワシントンDC近郊のレストランで「発見」されると他の客やレストランのオーナーなどから「恥知らず」と言われて囲まれ、「出て行け」と言われる出来事が起こりました。

反対派からすれば、困窮家庭の年端の行かない子供を親から引き離したり、憲法の基本的人権を否定したりする人間には、徹底的な抗議をしたいというわけです。ですが、トランプ政権の側からすれば、これは「一種の迫害」だということで、大統領自身が怒りのツイートをしたりしています。移民人道危機は、憲法観の衝突を引き起こしながら、国の分断をより深刻なものにしているのです。


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