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米朝首脳会談で戦争のリスクは高まった

ニューズウィーク日本版 / 2018年7月12日 16時30分



「最大限の圧力」再び?

このシナリオの別バージョンとしては、約束の中身が曖昧だったために、Aが実行すべき事柄について双方の解釈が異なり、平和をもたらすはずの合意が対立を激化させ、ついには軍事衝突を招く、というのもある。

あるいは、Aが安全を求め、Bがその求めに応じた場合。安全を保証すればAは安心して交渉に応じるだろうとBは考えたのだが、Bが軍事攻撃をしてこないと見切ったAはますます図に乗ってBを脅し、譲歩を引き出そうとするようになる。Bの思惑とは逆にますます「厄介な存在」になってしまったわけだ。

最初の2つのシナリオはまさにトランプが今やっていることだ。最後のシナリオは、レーガン、クリントン、それにブッシュ(息子)政権の北朝鮮政策と概ね重なる。アメリカが甘かったせいで、北朝鮮は大規模な飢饉に耐え、世襲による2度の政権交代を乗り切り、核兵器と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に成功した。

対米交渉で自信をつけた北朝鮮はより大胆になり、侮れない軍事力を保持するようになった。今後、戦争が起きた場合、以前とはケタ違いに壊滅的な被害がもたらされることになる。

北朝鮮には核廃棄をやる気がないと分かれば、トランプ政権はずるずる時間稼ぎをさせず、早い段階で「最大限の圧力」路線に戻る考えを明らかにしている。「破綻が避けられない場合、(過去の政権と違って)早く対応に乗り出し、制裁と国際的孤立で北朝鮮を締め上げる最大限の圧力キャンペーンを再開する」と、マイク・ポンペオ米国務長官の顧問はニューヨーク・タイムズに語った。

タフな交渉が必要だった

ポンペオが予想するように、非核化は非現実的な目標であり、米朝合意は破綻するかもしれない。そうなればポンペオはトランプに2017年の圧力と威嚇戦術に戻るよう助言するだろう。ただし、2017年と違い、今度は対話という戦争回避のための選択肢はもうない。

こうした状況になったのは不幸でもあり、急ぎ過ぎたツケでもある。2017年の圧力外交は、それなりに理にかなっていた。トランプ政権は圧力を強め、無責任な行動を続ければ手痛い代償を払うことになると、北朝鮮にようやく思い知らせることができた。これは基本的には悪くない、効果の期待できるアプローチである。ただし、それによって北朝鮮を対話の場に引き出し、タフな交渉を行い、強制力のある約束を取り付けられれば、の話だ。

トランプ政権は前半はまずまずよくやったのに、後半で失敗した。手ぬるい交渉による合意が踏みにじられたら、あとはもう武力行使という選択肢しか残らなくなる。

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